日本画の最高峰「院展」元理事が告発「理事会に“盗作作家”の濡れ衣を着せられた」「偶然構図が似ただけなのに」
写真を見せてもらったが、フレアスカートをまとった女性が森の中で腰掛けている写真だった。ただ写真の女性は手を後ろに回していて作品とは明らかに違う。 するともう一枚、参考にしたという雑誌の切り抜きを見せてくれた。こちらは長袖のシャツ、長袖のズボンを着用した髪の長い女性が椅子に座っている写真で、腕をクロスしている様は作品にそっくりだ。 確かにこの2枚を掛け合わせてあの作品が出来上がったという言い分は理解できるものだった。 「実は下書きの段階では実際の作品よりスカートは大きく膨らんでいた。ただ実際描き始めるとスカートのボリュームが大き過ぎて背景と合わなかったので、スカートの一部を白く塗り潰しました。足の幅も最初は開いていたのですが、妻から『女性なのに大股開きで座っているのはおかしい』と指摘が入って縮めました。色々な偶然が重なり、結果として國司作品の構図、ポーズに近づいていってしまった」
追加資料の提出を願い出たが却下された
梅原氏は約2カ月間かけてこの絵を描き上げ出品。作品は例年通り昨年3月下旬から日本橋三越本店で展示された。すると数日後に田渕俊夫理事長から電話がかかってきた。 「田淵氏はいきなり『あなたが出品した絵に盗作疑惑がかかっている。誰かの絵を真似て描いた心当たりはありますか』と聞いてきた。身に覚えがない話なので『ありません』と即答しました」 続けて電話を代わり出てきた手塚雄二理事は「これは問題になる」と捲し立てるように言ってきたという。 「『そっくりな絵があるからもう倫理委員会は避けられない』『理事を降りてもらうのと、1年間出品停止処分は免れない。丸く収めるので認めてくれないか』と。その晩も手塚理事とは電話したのですが、『他人が言っているならともかく、今回は本人が言っているから逃げられない』と畳み掛けてくる。彼らは私の言い分を聞く前から『似ている』だけで処分すると決めていたのです」 理事と同じメンバーで構成される倫理委員会は、梅原氏が指摘を受けた翌日の3月26日に第一回が開かれたが、体調を崩した梅原氏は出席できなかった。第二回は梅原氏に知らされることもないまま、開かれていたという。 ようやく体調が回復し、4月27日に行われた第3回目倫理委員会に弁護士を同伴して出席。身の潔白を訴えたが、訴えは聞き入れてもらえなかった。 「理事たちはこぞって『この絵は國司作品を見ていないと描けるものではない』と決めつけて言ってきました。そして、持参した説明資料の中にエスキース(註・初期段階の下書き)と小下図(同)が入っていないことを責めてきた。ただ私はそれらを事前に持ってくるように言われていなかった。いずれも自宅にちゃんとありましたので、その場で追加提出したいと訴えたのですが、田淵理事長は『これ以上、結論を先延ばしできない』と述べ審議は終了してしまった」