日本画の最高峰「院展」元理事が告発「理事会に“盗作作家”の濡れ衣を着せられた」「偶然構図が似ただけなのに」
騒動の始まりは、國司氏が春の院展開催中に梅原氏の作品を見つけ「私の過去の作品に酷似している」と理事会に訴え出たことだった。 國司氏も2016年に同人に選ばれ、18年から藝大教授を務める画家である。2人は同じ藝大出身。日本画の大家・平山郁夫(09年に死去)研究室で共に学んだ「兄弟子・妹弟子」の関係だった。年齢は10歳ほど梅原氏が上で、梅原氏が平山研究室で助手を務めていた頃に國司氏は学部生として研究室に入ってきたという。 だが、梅原氏は「特に親しいわけでもない、研究室にいた後輩の一人だった」と振り返る。 「研究室で一緒だった頃は先輩として面倒を見ていましたが、彼女は学部卒業後に研究室を出ましたのでそれ以降は会合などで年に1、2回顔を合わせる程度。そこまで仲良い関係ではなかった。ただ私としては特に嫌われていた印象もありません。だから彼女がなぜ私に何も確認せず、いきなり理事長に訴え出て私を貶めるようなことをしたのか理解できないのです」
「富士山を描けば似通った絵が出てくるのと同じ話」
22年前、國司氏はこの作品で「春季展賞」を受賞した。その時、すでに同人だった梅原氏は審査員として國司氏の作品を見ていたが、梅原氏は審査した記憶さえないという。 「毎年『春季展賞』候補作は35点くらい並べられ、その中から30分位の時間で選ぶのです。なんせ22年前の話ですし、他にも絵は毎年数千点くらいは見ています。賞を獲ったとはいえ特段、画壇で話題になった作品でもなかったですし…」 だが2つを見比べて似ていると言う人がいることは理解できると話す。 「女性の座り姿の構図が似ていると言われるのは分かります。ただ同じような対象を描く場合、構図が似通ってしまうことはよくあることなのです。富士山を描けば似通った絵が出てくるのと同じで、今回は偶然にも、2人ともフレアスカートを履いて座っている平凡なポーズの女性を対象にしてしまっただけの話。女性が座った姿を描くとなると、よほど奇抜なポーズでなければ似るものでしょう。ただ私自身は2つの作品は表現として全く異なるので、似ていないと考えています」 女性の人物画を描くことを得意とする梅原氏はこの作品の着想を、座り姿の菩薩から得たと話す。菩薩を擬人化するにあたって、ポーズは雑誌に掲載されていた女性モデルの写真を参考にしたという。