インドに「ブラック企業」は存在するのか、「労基署」との意外な関係は?…日本人には信じがたい「インド人の働く環境」
2023年に中国を抜き、世界人口ランキング1位となったインド。同国は数年以内に日本経済を抜き、世界GDPランキング3位になることがほぼ確実視されている。そんなインドに赴任して3年、総合商社の管理職として働いている34歳のM氏に、前編記事〈34歳年収1200万円商社マンが明かす「インド人の部下」のワークライフバランス…頻繁に有給を取る「意外なワケ」〉でインド人の「ワークライフバランス」の実態を教えていただいた。本稿では引き続き、インド人の「働く環境」について話を聞いた。 【写真】10年前に三菱商事に投資していたら「配当利回り」は今いくら? 聞き手:佐藤大輝(世界37ヶ国を旅したバックパッカー)
インドに「ブラック企業」はあるのか?
ーーインドでは経済成長に法整備が追い付いてない、ブラックな職場が増えてきている……といったニュースを私は見たことがあるのですが、実際はどうなんですか? いやー、僕が見ている限りインドの方々が、ブラック企業に苦しんでいるイメージはあまりないですけどね。なぜならみんなゴーイングマイウェイだからです。遅刻や納期遅れは当たり前ですし、管理職の僕が何度注意してもヌカに釘。みんなケロッとしてます。残業をしなくちゃいけないシーンでも、みんなシレッと定時に帰ろうとしてくるし……。 ーーインド人は「お金よりも時間」を重視してる感じですか? 人によるので一概には言えませんが、どちらかと言えば時間優先な人が多いかもしれません。少なくとも日本のサラリーマンみたいに「生活残業をして稼がなきゃ」みたいな発想は感じないです。みんな何が何でも定時で帰ろうとしてくる。 しかし、だからといって業務効率や生産性を上げようと考えないのが、日本人とインド人の大きな違いです。帰ることばかりに頭がいってて……いや、もう本当に、管理職からすると大変なんですよ。 ーーなるほど。インド人はある意味自分の力で「働き方改革」を行い、ホワイト企業を実現させているのですね……。
インドの労働者は守られている
ーーインドにも労働基準法みたいなものってあるんですか? ありますよ。職種やスキルなど、住んでいる地域によって最低賃金などが決められています。有給休暇の制度もあって、日本と同じくらいの日数が付与されますね。労働時間の上限も決められてて、たしかインドの法律だと、1週間で最大48時間までだったかな? ウチの会社は日系企業なので、日本と同じ8時間労働。1時間休憩を基本にしてます。インドでは退職金制度も法律で決められてて、勤続年数が5年以上の労働者には退職金が支給されます。 ちなみにインドにも労働基準監督署みたいな役所があって、まるでカフェみたいな感覚でみんな気軽に使ってます。 それと、真実はわかりませんが、インドでは役所と政党の癒着みたいな部分が指摘されていて……つまり役所からすると労働者は「お客様」なんです。大切な1票を獲得するため、役所は労働問題を丁寧に扱ってくれる。管理職の僕からするとやりにくい限りですが、労働者を守るという点では機能しているのかなって。