<高校野球>台風19号で被災した磐城「地元に元気を」 ボランティアで受けた激励 21世紀枠候補
3月19日に兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕する第92回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)の出場32校が1月24日、選考委員会で決まる。そのうちの3校は、困難な環境の克服や地域貢献など他校の模範となるべき要素を選考条件に加えた「21世紀枠」で選ばれる。20回目を迎える21世紀枠。全国9地区の候補校から東北・磐城(福島)を紹介する。【石井朗生】 【写真特集】歴代の「21世紀枠」出場校 2019年10月の秋季東北大会で46年ぶりに2勝を挙げて8強入りした。その磐城は初戦の後、地元の福島県いわき市へ一旦帰っている間に台風19号に襲われた。学校周辺も河川の氾濫で大きな被害を受けた。家屋浸水で救助のヘリコプターの飛び交う厳しい現実を見て大会に戻り、臨んだ2回戦。選手たちは「野球をやっていいのか」という迷いを抱えつつ「勝って地元を元気づけよう」と結束した。しぶとい逆転劇で勝利を収めた。 大会後に帰郷すると、土が大量に流出したグラウンドを整備し、別のグラウンドを使えなくなったサッカー部とラグビー部に提供。半月余りを被災家屋の片付けなどボランティア活動に費やした。東北大会の健闘を知る住民に激励されることも多く、沖政宗投手(2年)は「地元の支えと野球ができるありがたさを感じた」と振り返る。 地域随一の進学校は甲子園に春2回、夏7回出場。1971年夏に準優勝したが、95年夏を最後に遠ざかる。15年に着任したOBの木村保監督(49)は「勉強も野球も自ら全力で取り組もう」と自主性を尊重して指導する。部員の積極性や粘りが引き出されてチーム力も高まり、同年から東北大会に春秋計4度進んだ。 選手19人と女子マネジャー1人の現在のチームも、練習のメニューや課題、修正点を自分たちで考え、木村監督が口を出すのは要所だけ。東北大会2回戦でも選手同士で話し合って試合途中から打撃の狙いを変え、劣勢から逆転した。岩間涼星主将(2年)は「会話を大切にし、自分たちで考えられるのが強み」と自信を持つ。 19年春から野球を広め、他人への思いやりも学ぼうと、近くの小学校の学童クラブで週1回程度、ティーボールを教えたり、ドッジボールや鬼ごっこなどで遊んだりする活動に取り組む。部員にあこがれ「磐高(いわこう)で野球をやりたい」という小学生も出てきた。地域の力も糧に前進するチームは、着実に強さと存在感を増している。