酪農家、初の〝1万戸割れ〟緊急調査、さらに半数が離農検討 経営状況は約59%が赤字 主な要因は円安・原油高・ウクライナ情勢
今年10月、日本の酪農家の戸数が初めて1万戸を割り、9960戸になったことが分かった。酪農関係の各機関で構成される一般社団法人中央酪農会議が2日、指定団体で受託している酪農家の戸数を集計した結果を発表したものだ。 【グラフでみる】近年の生乳生産量の推移 これを受けて同会議が11月に全国の酪農家236人を対象に行った経営状況に関する緊急調査では、今年9月の経営状況について約59%が赤字であり、現在の酪農経営の環境については約83%が「悪い」と回答し、酪農家にとって非常に厳しい環境であることが判明。経営悪化の主な要因としては、円安、原油高、ウクライナ情勢の3つが挙げられている。さらには約48%が離農を検討していると回答し、日本の酪農は危機的な状況を迎えていることが分かった。 北海道大学大学院農学研究院の小林国之准教授は現状を解決するために「持続的な酪農経営のためには経営構造のシフトが必要。そのためには経営転換への支援と、消費者との対話と理解が不可欠だ」と分析している。 また、国際酪農比較ネットワークは今年10月に「世界的な生乳不足が進行していることに大きな懸念が生じている」との分析結果を発表。国産だけでなく、世界的に牛乳や乳製品そのものが入手しにくくなる可能性も指摘されている。 一方で、中央酪農会議による消費者(月に1回以上の牛乳等の購入者)に対するアンケートでは、「国産の新鮮な牛乳が飲める環境を維持したい」との回答は約98%に達した。「日本の酪農家を応援したい」は約97%、「支援する行動をしたい」は約91%あり、酪農家への応援や支援をいとわない消費者が多いことも判明した。 酪農家は「赤字でも世の中のために生乳生産をしていることを理解してほしい」「牛乳や乳製品などを少しでも多く消費してもらいたい」と訴えている。