ホンダからトヨタへ……福住仁嶺と大湯都史樹のメーカー間移籍を実現させた、首脳同士の議論「各ドライバーの可能性を高めるために」
12月12日、トヨタとホンダが立て続けに2024年の日本国内トップカテゴリーふたつに参戦するドライバーラインアップを発表した。その中でも注目を集めたことのひとつが、福住仁嶺と大湯都史樹というホンダ系ドライバーとして戦ってきたふたりが、2024年からトヨタ陣営に移籍することになったという点だろう。 【動画】2度のスーパーフォーミュラ王者、野尻智紀が2021年のF1を戦ったレッドブル・ホンダRB16Bをドライブ「すごく興奮した!」 このふたりの”メーカー間移籍”については、トヨタとホンダとの間でじっくりと話し合いが持たれたという。 トヨタ(TOYOTA GAZOO Racing)の体制発表会に登壇したトヨタ自動車の豊田章男会長はこれについて、次のように語る。 「ホンダさんは、新人を育成するのが得意だと思います。そしてある程度のところまでいった時のセカンドキャリアを考えると、トヨタの方が面倒見がいいと思います」 「ドライバーとしての一生を考えた時に、ドライバー目線というか、世界で戦えるドライバーを育てていこうということで、ホンダさんと我々が本音で話をしたと聞いています」 トヨタGRカンパニーの高橋智也プレジデントも、これについて次のように説明した。 「HRC(ホンダ・レーシング)の渡辺(康治)社長と話をしました。我々は共に、ドライバーを中心に日本国内のモータースポーツを盛り上げていきたい、ドライバーに光り輝いてほしいということを、何度も話し合いました」 「その結果、HRCさんとしても、今回のドライバー移籍については、ドライバーの意思を尊重して送り出していただくことになりました」 またTOYOTA GAZOO Racingモータースポーツ技術室の加地雅哉室長は、さらに次のように付け加えてくれた。 「ホンダさんは才能を見出して光らせるのがものすごくお上手で、それを見て、若いドライバーたちはホンダさんを目指すんだと思うんですよね。そこは、ものすごくリスペクトしているところです」 そう加地室長は語った。 「育ってきた選手の方々が、次のステップをどうしていこうかというところを、ホンダさんとウチとでしっかり考えてやっていけるという環境があれば、選手にとってはいいよねということだと思います」 「今回のことについては、両者で何回も話をしてきました。そういう意味ではトヨタが、ホンダがということではなく、両者で一緒にやっていきましょうということです」 このトヨタの会見から4時間後、取材に応じたHRCの渡辺康治社長も、次のように説明する。 「協調する領域については、トヨタさんとは普段からお話をさせてただいています。ドライバーが中心になって輝くことで、モータースポーツ界全体を盛り上げていくということについては、一緒にやっていこうと言っています」 そう渡辺社長は言う。 「あまりにもメーカー縛りという形で進んでいくと、ドライバーの方々の可能性を狭めてしまうこともあると思います。ですので、状況を見ながら、メーカー縛りからドライバー中心という方向に持っていこうという議論は積み重ねています」 「我々HRCとしては、育成から新人、そしてベテランのドライバーをバランスよく配置するということを進めています。その時には、それぞれのドライバーの思惑と一致しないということも、当然出てくるわけです」 「プロのトップアスリートであるドライバーが、色々と考えた上で結論を出すことについて、メーカーの垣根を超えて尊重していくということもあります。でもそれは我々が冷たくしているということではありません」 「もちろん、長くホンダのドライバーとして戦ってくれたふたりが旅立っていくことについては多少寂しいと感じる部分もありますが、我々としては次の居場所で活躍してくれることを期待しています」
田中健一
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