1校1000万円、「DXハイスクール」1000校指定の狙い 背景に「デジタル・グリーン成長分野」人材育成
「スーパーサイエンスハイスクール」と何が違う?
文部科学省が、100億円の補正予算を基に2024年度から「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」をスタートさせる。公立・私立の高等学校1000校を対象に、情報や数学、文理横断的・探究的な学びなどを強化する学校を支援する方針だ。1校につき補助上限額1000万円を投じるというが、その狙いや申請条件などについて、文科省初等中等教育局参事官(高等学校担当)の田中義恭氏に聞いた。 【写真】1校1000万円を上限に補助、どんな高校が支援の対象になるのか? 1月31日より、文科省の高等学校DX加速化推進事業、通称「DXハイスクール」の申請が始まった。 この事業の背景には、デジタルやグリーンなどの成長分野の人材を育成しようという政府の方針がある。具体的な目標は、35%にとどまる自然科学(理系)分野の学部生割合を5割程度にすることだ。これを受け文科省は、2022年度の第2次補正予算において確保した3002億円で基金を創設し、大学におけるデジタル・理数分野への学部転換を進めている。 一方、高校ではいわゆる文理選択が一般的で、文系を選ぶ高校生が多い。高校生の大学理系学部への進学率を高めていくためにも、高校段階での人材育成の強化が必要だ。そうした背景や課題認識が、DXハイスクールの実施につながったと、同事業を担当する田中義恭氏は語る。また、高校政策の観点からも必要だったという。 「中央教育審議会『高等学校教育の在り方ワーキンググループ』による昨年8月の中間まとめの中で、ICTを活用した文理横断的・探究的な学び、STEAM教育などを進めていくことが必要だとの指摘がありました。そうした高校教育サイドからの要請もあり、国が目指す成長人材育成は高校段階から呼応していく必要があるとして、今回の事業がスタートすることになったのです」 文科省は2002年からスーパーサイエンスハイスクール(SSH)事業を実施している。こちらもデータサイエンスや探究などを含む理数教育の強化校に予算が割り当てられているが、このSSHとDXハイスクールはどう違うのか。 「もちろんSSHも国が目指す人材育成につながっていますが、これは科学技術・理数教育に関する研究開発を行う高校を指定し、先端のカリキュラムを開発して先導例をつくっていくことを目的としています。一方のDXハイスクールは、理数教育を重視する点は重なるものの、こちらはよりデジタルに重きを置いて環境整備を行うことを目的とし、文理横断的・探究的な学びの裾野を全国規模で広げていく狙いがあります」 確かにSSHの指定校は218校であるのに対し、DXハイスクールは専門高校を含む1000校が対象だ。全国の5校に1校が対象となるため、全体の底上げをしていくという意味合いが強い。 「現在、ボリュームゾーンの普通科高校では文系が多く、ここの理数系への転換を促したい。また、農業、工業などの高校はまさに成長分野を学んでおり、商業高校もデジタル教育が積極的に進められています。そうした専門高校の生徒たちが職業的な実践力を身に付けたうえで、さらに高度な学びが可能となることを後押しする狙いもあります」