「すぐやる」組織がはまりがちな思考停止の罠 実行することばかり重視するチームの危うさとは
しかし、どの魚雷をどの発射管にいつ装填するかを決めることに比べれば、頭脳労働はあまり必要とされない。 魚雷の装填といった作業の実施には、必然性や達成感が生まれる。そのため、こうした作業に人はのめり込みやすい。「やり遂げた」ことで生まれる高揚感に丸め込まれてしまうのだ。 だが、反省することなく何度も業務を完遂させていると、次第に、やり遂げても何も感じなくなってしまう。 バリエーションを歓迎する状況では、「開かれた」「好奇心をそそる」「可能性がある」「改善に目を向けた」といった言葉が使われる。
あるいは、「どうすればわかる?」や「どの程度安全なのか?」といった問いかけとなり、好奇心や弱さが言葉に表れる。 誰もが同じことを考えていれば、バリエーションは少ない。 そういう状況は、「意見の一致」という言葉で表されることがある。これは、肯定的な意味で使われるのが一般的だ。 だがこれは、バリエーションがなくなったということでもある。人々の意見が異なるとき、とりわけ反対意見が出るときは、バリエーションが豊富な状況だ。
人はものを考えるときにバリエーションを望まない。多様な意見を歓迎し、意見の一致を避けるべきときでも、リーダーは意見を一致させようとすることが多い。 そうしておきながら、チーム内から新たなアイデアが出てこないのはなぜだろうと首をかしげる。 人はなぜ、バリエーションを減らしたがるのか? まず、選択肢が増えれば、そのぶん認知的なハードルが上がるという点があげられる。要は考慮しなければならない要素が増えるのだ。これは大変な作業だ。
人の脳は労力を最小限にとどめるように配線されているので、そうした大変な作業を拒む。買い物客に多すぎる選択肢を提示すれば、その客は何も買わない。 ■行動モードのときは、意見の多様性は組織の敵になる だが、それ以上に重要な理由として、バリエーションは、つねに組織の重要事項とされてきた、「行動」の敵になるという点があげられる。 バリエーションが増えることは、思考の際にはメリットになる。逆に、行動の際は、バリエーションを減らすことがメリットになる。