CEDAW 日本に強い勧告 選択的夫婦別姓導入や女性議員増など特に強調
条約の理解不足を露呈
また、皇位継承を男系男子に限定している皇室典範について「男女の平等を確保するための法改正を」と言われた内閣官房の担当者は「皇位継承についてこの委員会で取り上げることは適切ではない」と回答拒否に等しい発言をした。これに対して議長は「日本だけでなく全ての差別的な法律がある国に対して同様の質問をしている。この委員会で取り上げるべき事項だ」と厳しい態度を見せた。 日本政府は女性差別撤廃条約を1985年に批准しており、条約は国内でも力を発揮する。しかし、その理解を疑う応答もあった。裁判で条約が反映されていないことを問われた法務省担当者は「この条約の諸規定は、直接個人の権利義務を規定したものではない」と回答したのだ。個人の権利を対象外にして性差別を撤廃することができるはずがない。そのため勧告では裁判官など司法関係者に、徹底して条約の周知を行なう必要を強調している。恥ずかしい限りだ。 日本政府の対応について、女たちの戦争と平和資料館(wam)の渡辺美奈さんは「委員の的確な質問に対し、代表団はペーパーを読み上げるだけ」とあきれる。「あすには」理事の波多野綾子さんは「残念なことだが、日本政府の審査におけるこのような対応はよく知られている」という。 今回、他国の審査では、質問に対応する答えはもちろん、政府代表が委員に対しさらなる助言を求める場面もあったということで、日本政府と他国の姿勢の違いが際立つ。日本代表団がなぜこのような応答をしたのか男女共同参画局に意図を尋ねたところ「できるだけ誠実に応えようとしたまでで、特段の意図はない」とのこと。審査時の態度が日本政府の「誠実」だとしたら勧告を実現しようという誠意があるのか甚だ疑問だ。市民が注視し、実現を要求していかなくてはならない。
古川晶子・ライター