施錠したのに農機盗難 一夜のうちに忽然と… 農家「まさか」 福島
福島県南の水稲農家が5月中旬、トラクターとトラックの盗難に遭った。施錠やハンドルロックなど対策を行っており「まさかの被害。(米作りの)出鼻をくじかれた」と語る。県境を越えて活動する窃盗団もおり、手口も巧妙化している。コロナ禍の収束後、県内の窃盗件数は増加に転じており、県警は注意を呼びかけている。 農家や県警によると、被害は12日夜から13日朝にかけて起きた。翌朝にメンテナンスしようと、トラックの荷台にトラクターを載せ、倉庫前に駐車していたところ、朝には消えていた。目撃者はおらず、犯人は見つかっていない。 トラックは施錠した上で、盗難の抑止となるようクレーンやアウトリガー(脚)を伸ばしていた。一方、防犯カメラの死角で、隣県につながる国道に面した場所に止めていた。農家は「普段は裏手に移していた。過信があった」と悔やむ。 経営面積が40ヘクタールを超す担い手で、当時は代かきの繁忙期。知人からトラックを借りて農機を運んだが、手間を要した。苗の定植も「本来より1週間遅れている」と語る。 トラクターは中古機を探しているが、中古価格が上昇しており、共済金だけでは賄えそうにないという。 トラックは茨城県内で乗り捨てられているのが見つかったが、トラクターは不明のまま。福島県警は、転売目的の犯行とみて、捜査を進めている。 県警捜査三課によると、県内の自動車盗難はコロナ禍の収束後、増加に転じている。2021年に68件まで減少した後、昨年は111件まで増えた。 隣接する茨城県内では、トラクターなど農業用特殊車両の盗難被害が19年の116件から昨年23件まで減った。ただし、今年は3月までに9件(前年同期比4件増)発生。増加の恐れがあるとして警戒を強めている。 両県警では、農機の前後に車を止めて犯行を抑止したり、トラックのエンジンがかからないようにする「隠しスイッチ」を装備したりして、複数の対策を行うよう注意喚起している。
日本農業新聞