「国外に脱出する」インド人と中国人 変わる〝大国の条件〟日本も他人事ではない!
国を捨てる人たちはどう動くか
デュームの指摘は、一国の発展を見る上でとても重要な視点である。一国の国力を判断する際、経済力や軍事力等のハードパワーは重要な要素ではあるも、同時に「思想・表現・宗教の自由があり、安心して生活できる国か」、「生まれに関係なく、頑張れば夢を実現できる公正・公平な社会であるか」等のソフト面も大切な要素である。正に、富裕層も含め国民が大挙して退避するような国を「世界の超大国」と呼ぶことが適切かという疑問は、忘れてはならない視点だと思う。 デュームは、裕福な中国人が、ビザを得て中国を脱出する理由((1)習近平が民間部門を取り締まったこと (2)習近平の強硬姿勢が国民を怯えさせていること等)に触れている。 不法入国中国人の場合、米国のテレビ報道等によると、概ね次のようである。 「ビザなし」で入国できるエクアドルまで空路で行き、車や徒歩、船などで中南米諸国を通って直線距離で約3700キロ離れた米国に向かう。これらの人たちの多くが中級クラス以上で、移動のために5000から1万ドルを払う。亡命理由は(1)中国の夢」という理念に幻滅した、(2)自由が欲しいということに加え、(3)イスラム教徒(ウイグル人)、キリスト教徒など宗教上の理由を挙げる人もいる。
インドに関しては、デユームは、インド人が脱出を図る理由として (1)汚染された都市、(2)税務当局による嫌がらせ、(3)劣悪な公衆衛生プログラム、(4)粗悪な都市インフラなどから逃れたいとの点を挙げている。これらに加え、カースト制度、ヒンズー教とイスラム教の対立といった問題もあると推測する。
日本も考えるべき在留邦人の状況
中国人とインド人の海外脱出の増加は、日本にとっても人事ではない。日本は深刻な人口減と労働力不足に直面しており、その対策の一環として、現在、技能実習制度と特定技能制度の改正に取り組んでいる。 今年の通常国会で改正法案が審議される。また、AI関連技術者などの高度人材の受け入れにも取り組んでいる。向上心のある勤勉な外国人材(中国人、インド人を含む)を迎え入れることは、日本の将来にとって不可欠である。 この10年間で日本人の人口は約381万人減少している。22年の1年間で約75万人減少した。この人数は福井県の人口に相当する。毎年一つの県が消滅している規模の減少数になっている。 23年6月現在、日本に在留する外国人は、約322万人いる。中国人が1位で約79万人、2位はベトナム人約52万人、インドは約4.6万人で「その他」に分類されている。 在留外国人は10年前より約115万人増加し、日本人の減少分の約3分の1程度を補っている。また、23年10月現在、日本で働く外国人労働者は約205万人であり、この10年間で約3倍増となっている。 価値総合研究所の試算(22年2月公表)では、30年には約419万人の外国人労働者が必要と見込まれており、国を挙げての取組みが不可欠である。
岡崎研究所