和田秀樹 がんが見つかれば手術や抗がん剤治療が待っている。予測される寿命が<10年以内>の人ががん検診を受ける意味は…
総務省統計局が令和6年9月に公開した「統計からみた我が国の高齢者」によると、65歳以上の人口が総人口に占める割合は、29.3%と過去最高だったそう。高齢化が進むなか、精神科医の和田秀樹先生は「今の高齢者をとりまく医療は<本当は必要がないのに、やりすぎている>可能性がある」と指摘しています。そこで今回は、和田先生の新刊『医者にヨボヨボにされない47の心得 医療に賢くかかり、死ぬまで元気に生きる方法』から、和田先生流・医療とのつきあい方を一部ご紹介します。 【書影】30年以上の高齢者医療の経験とデータからまとめた、医者と賢くつきあう心得。和田秀樹『医者にヨボヨボにされない47の心得 医療に賢くかかり、死ぬまで元気に生きる方法』 * * * * * * * ◆がん検診を受ける前に、発見されたらどうするか考えておく 早期発見すれば、回復の見込みが高いとされている病気にがんがあります。早く発見すれば、軽い治療ですむ、という考え方です。 ですが、軽い治療とは言っても、高齢の患者さんにとっては「軽い」ではすまされないことが多い。がんが発見されれば、手術や抗がん剤治療などが待っています。 以前は80歳以上の方に手術をしなかった消化器外科の領域である胃がん、大腸がん、肝臓がんなどは、90歳を超えた患者さんでも、全身状態がよく元気な人であれば、積極的に手術を行っている例もあります。 しかし、これらの治療を体力の落ちてきた高齢者が耐え抜くのは大変で、治療の害で亡くなっていく人も相当数いると考えられます。 がんが寿命を縮めるというよりも、治療が寿命を縮めてしまうことが実際に多いのです。これもがん検診でがんを見つけてしまった害悪だと私は考えます。
◆85歳をすぎるとほぼ全員に何らかのがんがある がんは、細胞分裂のコピーミスによって起こってくる病気です。 日本人の2人に1人ががんになると言われていますが、85歳をすぎればだれもが体内にひとつかふたつのがんをもっているものです。 私が勤務していた浴風会病院で年間100例もの解剖結果を見ると、85歳以上のほぼ全例でがんが見つかっているのに死因ががんの人は3分の1で、残りの3分の2の人は別の原因で亡くなっていました。 がんがあっても知らずに、別の原因で亡くなることのほうが多いのです。 高齢者の場合、がんの進行がゆるやかになるため、放っておいても大丈夫なケースは意外と多くあります。 がんを抱えながら、QOLを損なわずに暮らしている人もめずらしくありません。
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