和田秀樹<介護施設に入れる=かわいそう>は思い込みでは…実は「家族介護に伴う虐待が非常に多い」という悲しい現実
◆自立すると一気に疎遠になる日本 自立すると一気に疎遠になり、親に介護が必要になるまで子どもがほとんど家に寄りつかないなんて国は、世界的に見ても珍しいのではないでしょうか。 しかも、たとえ夫の親であっても、妻である女性がその介護の大半を担っているというのが現状です。これは、今や何かと問題視される「性別役割分担意識」以外の何ものでもないでしょう。 年老いた親の面倒を子どもが献身的に見るというのは、傍から見れば美しい話なのかもしれませんが、介護の実態というのはそう甘いものではありません。 特に女性は「何もかも完璧にやらなくては」と自分を追い込んでしまいやすく、そのプレッシャーがメンタルに深刻な影響を与えることが多々あります。
◆「介護施設に入れる=かわいそう」は思い込み だったら誰が親の面倒を見るのか、という話になるわけですが、せっかく介護保険があるわけですし、公的な介護サービスを積極的に利用するのがもっとも理にかなっていると私は思います。 「介護施設に入れるのはかわいそう」という風潮がまだまだ根強い日本では、その選択をすることに罪悪感を抱えてしまう人が非常に多いのですが、決してそんなことはありません。 そもそも、プロが行う介護と素人である個人の介護とでは多くの場合、そのクオリティに大きな差があります。 つまり公的な介護のほうがより良いケアを受けられるということです。 介護施設での虐待事件のニュースなどがテレビで繰り返し報道されることも、介護施設に入れられる高齢者は不幸だ、といった印象を強めているのだと思いますが、実態はまるで違います。 厚生労働省の調査では、2021年度の介護従事者からの虐待判断件数は735件(通報件数は2390件)ですが、家族や親族からの虐待判断件数は1万6426件(通報件数は3万6378件)で、家族や親族が虐待しているケースのほうが桁違いに多いのです。それどころかアンケート調査では介護家族の3~4割が虐待経験があると答えています。 この数字だけを見ても、介護施設に預けることが、家族や親族に介護されている人より「かわいそうだ」とは必ずしも言えないことがよくわかります。 ※本稿は、『60歳から女性はもっとやりたい放題』(扶桑社)の一部を再編集したものです。
和田秀樹
【関連記事】
- 和田秀樹が<女性は60歳になったらやりたい放題で生きていくべき>と断言する理由とは…第二の人生は「偽りの自己」から「本当の自己」で進むべし
- 和田秀樹 年をとれば動脈硬化やがん細胞がない人は存在しない。老人の勝ち組になるには、50歳が分岐点【2023年間BEST10】
- 和田秀樹 子どもの言うことを聞いて「こんなはずじゃなかった」とならないために。第一は「自分が後悔のない人生を送ること」と考える【2023年上半期BEST10】
- 和田秀樹 症状が似ている「老人性うつ」と「認知症」を専門医はどこで見分けているのか?この2つの条件が揃ったらうつの可能性が高い
- 和田秀樹 高齢者3640万人のうち300万人が「高齢者のうつ病」と推測。似ているようでこんなに違う「認知症」と「老人性うつ」の症状と対策