トランプ氏の政策にジョーカーはあるのか? 投資家が注視したいポイント
差別発言やセクハラ行為などで、評判が悪いかにみえたドナルド・トランプ氏が次期大統領に選ばれました。一時、相場は乱れましたが、トランプ氏の勝利は米国経済にとってプラス要因だと判断した投資家のカール・アイカーン氏は、10億ドル(約1080億円)を米国株買いに投じたそうです。 トランプ氏の経済政策は、実現できるかどうかは別として、経済専門家の多くは米国の経済成長に期待を寄せています。相変わらず米国各地で行われているデモは収まらない現状のもと、辣腕投資家などの側近就任の可能性など、強い米国を取り戻そうとするその一挙一動に注目が集まります。投資家は今後、どのような点を注視していくべきでしょうか? あおぞら証券・顧問の伊藤武さんが解説します。
市場は新大統領誕生を歓迎
まずは、トランプ次期大統領誕生までの数日間の市場の動きを見てみます。 大統領選挙を控えて、株式市場はトランプ候補の動向に対し神経質な動きに転じ、少しでもトランプ氏当選の可能性が高まると、市場反応はマイナスに転じました。ヒラリー・クリントン氏の追加私的メールの発覚に対し、選挙日の11日前に連邦捜査局(FBI)による捜査開始が伝えられました。選挙予測がクリントン氏絶対優位から、僅差の状況に転ずるや否や、米国市場は下げ始め、S&P500種指数は数十年振りに9日間の連続下げ日を演じました。不確定状況に対する市場の反応です。市場観測はクリントン氏勝利であれば歓迎し、トランプ氏勝利であれば、市場動向は見通し難となりますが、反応は大きく下げると想定。事実、東京市場はトランプ勝利が浮上した時点から反落を演じ、ニューヨーク市場も寄り付き前の先物市場では大幅の下落でした。 ところが、トランプ氏の勝利を市場は大反騰で迎えました。上記の通り、現状維持から変化を求める米国民の判決を市場は歓迎しています。では今後はどうなるのでしょうか。 トランプ政策は経済の活性化を目指します。サプライサイド財政政策の出動と金融政策の見直しは、具体的に期待されています。現時点において、保護貿易や多くの政策対応は未知数。財政赤字問題も完全に棚上げにしてしまいます。還元すれば、短期的には市場好材料が先行し、問題対応はずっと後回しとなるでしょう。当面トランプ相場が期待される確率が高いと思われます。トランプ政権準備の段階で人選が進行し、政策策定がどのように推移するかが、今後の課題となるでしょう。それでも、政治よりも景気動向と企業収益に注視するのが、相場の常。その限りでは、強気の見解が優勢になるでしょう。