トランプ氏の政策にジョーカーはあるのか? 投資家が注視したいポイント
予見できる諸政策には何がある?
経済政策はレーガノミクスに類似し、サプライサイド政策をほのめかし、財政赤字は意に介さない方針です。それは減税及び財政出動を意味します。金融政策依存度は減少し、インフレ要因が増大する見込みです。 所得減税 - 高額所得層中心とする個人所得減税は所得水準別に12%、15%、そして最高税率は33%に引き下げることを提案。相続税も撤廃の意向です。法人税改正は35%の税率を20%、その後に15%に引き下げることを提案済みです。さらに、米国企業の海外滞留資金の引き上げを認める方針。企業収益は大きな後押しを受けることとなります。 インフラ投資 - クリントン氏提案の2750億ドルのインフラ投資を上回る規模の支出を提案。 金融 - 金融政策は中央銀行の専管事項ですが、イエレン連邦準備理事会(FRB)議長を名指しで批判しています。主要国が採用している異次元量的金融緩和策 (QE) は見直しを迫られるでしょう。米国政策金利は12月に引き上げが濃厚となり、2017年も引き上げに対する慎重論は遠のく可能性を高めます。すでに金利は上昇基調に転じています。 貿易 - 公約は、厳しい保護政策です。環太平洋経済連携協定(TPP)および対欧州の環大西洋貿易投資協定(TTIP)はご破算とし、批判の的とした対メキシコの北米自由貿易協定 (NAFTA) の内容総点検、および海外に就業を移転する米国企業に対する制裁措置などがあります。 為替 - 米国景気が加速し、金利上昇が他国に先行すれば、ドル高基調となるでしょう。ところが、トランプ氏は中国に対し、人民元の為替操作国と糾弾しています。現状人民元はファンダメンタルズ要因に基づき、人民元安が進行。発言は矛盾していますが、もしドル高の不都合が生じれば、自ら為替操作を求める可能性もあるでしょう。 規制緩和 - リーマンショック後、金融制度の安定を確保する目的で制定されたドッド・フランク法の見直しを迫るでしょう。同法の内容は膨大で複雑極まりなくなっています。 国防と外交政策 - 国防および退役軍人予算の強化が図られることが予想されますが、最も顕著な変化は、同盟協定の見直しとなるでしょう。最先鋒は、日本と韓国であり、両国の軍事予算の大幅負担を要求。ほかのアジア諸国に対しては、共同負担率の調整を図ります。欧州では北大西洋条約機構(NATO)加盟国に対し、軍事予算負担の見直しを迫ります。また、保守派の意に従いイランを敵国とみなし、イラン核協定破棄を求め、そのほかイスラム国や北朝鮮は標的となる可能性が高まるでしょう。 移民政策 - 移民制限を厳しく強化し、メキシコからの不法移民は強制送還を実施し、イスラム諸国からの移民流入は極度の制約を課します。公約としてメキシコとの国境間重点的に壁を建設することになると思いますが、公約に反し米国が負担せざるを得ないでしょう。 医療政策 - 米国で2011年オバマ政権はオバマケアと称する国民皆保険制度を初めて導入。その効果は健康保険未加入の2000万人が新に保険を受けるに至っています。共和党の保守勢力は新保険制度に猛反対を表明し、コスト増も大きな問題となっています。トランプ政権は早期にオバマケア破棄または大幅にメスをいれることになるでしょう。 エネルギーおよび環境政策 - 再生エネルギーは後退し、石炭、石油、そのほかエネルギー産業が復活し、米国は早期に世界最大のエネルギー産出国の地位を築くことになるでしょう。石油輸出国機構(OPEC)諸国の地盤沈下は継続すると予想されます。それとは逆に、期待される世界的環境保全協力対策は大きな見直しに迫られることになるでしょう。