日立、2024年度の通期業績見通しを上方修正--中期経営計画達成に自信
もう一つ今回の上方修正の原動力となったのが、「Lumada」事業だ。3セクター(DSS、GEM、CI)を横断するLumada事業だが、今回の発表では、2024年度の売上収益を1000億円増の前年比18%増の2兆7500億円とした。全社売上収益に占める割合は30%に達する。また、Adjusted EBITAの構成比では41%を見込む。 Lumada事業は、「マネージドサービス」「コネクテッドプロダクト」「システムインテグレーション」「デジタルエンジニアリング」の4つで構成されるが、中でもマネージドサービスの売上収益は、年初計画から1100億円増の9600億円に上方修正している。加藤氏は、「Lumada事業の成長と収益性の向上が今後の日立全体の売り上げと収益の拡大に貢献する」との姿勢を改めて強調した。 Lumada事業で最も高い成長が期待されるのは、やはりGEMだ。2024年度見通しで、前年比37%増の5600億円を見込む。ここでは、日立エナジーにおいて、GlobalLogicやHitachi Digital Servicesとの連携を通じ提供する設備資産統合管理システムなどのデジタル事業を強化。鉄道システム事業では、「NVIDIA AIテクノロジー」を搭載したデジタルアセットマネジメントサービス「HMAX」を開発し、列車や信号といった鉄道インフラの管理を最適化するAIデジタルソリューションを提供する。既にデンマークのコペンハーゲン地下鉄からHMAXを受注し、デジタルサービス事業をさらなる拡大に取り組むという。 Lumada事業で、次に高い成長率なのがCIだ。2024年度の売上収益で前年比25%増の1兆1000億円を計画。CIセクターでは、日立製作所が買収を完了したロボティクスSI企業の独MA micro automationや、製薬エンジニアリングサービス企業の米Castle Hillと連携することで、成長分野におけるインテグレーション事業を強化。Lumada事業によるサービス拡大がCIセクターの増収増益計画の柱となっている。 そして、最も規模が大きいDSSでは、2024年度の売上収益で前年比17%増の1兆2200億円を計画。新たな取り組みでは、Singapore Telecommunications(Singtel)との戦略的提携により、日本とアジア太平洋地域における次世代データセンター事業やGPUクラウド分野での事業を拡大し、顧客企業のAI導入をサポートする体制を強化する考えも示した。 加藤氏は、「データセンター事業は、海外ビジネス比率が圧倒的に高いが、国内データセンター事業者との連携強化に加えて、Singtelとの戦略的提携を通じ、国内のデータセンター需要の増加にも対応していく」と述べた。 データセンター事業では、日立ヴァンタラのストレージや日立エナジーの変圧器、日立GLSの空調機器のほか、CIセクターが持つ受変電機器や無停止電源装置(UPS)、入退室管理システムなどセクターを超えたグループ連携により、旺盛なニーズに対応していくという。 また、DSSに含まれるGlobalLogicの好調ぶりも際立つ。GlobalLogicの第2四半期(2024年7~9月)業績は、売上収益が前年同期比18%増(ドルベースは14%増)の735億円となり、Adjusted EBITAは18億円増の144億円で増収増益を達成した。 加藤氏は、「欧州を中心にIT投資の抑制が継続しているものの、北米で受注を獲得し、高い成長を維持できた。生成AIに関する需要を新たに取り込んでいるほか、GEMやCIとの相乗効果が生まれている」とした。 なお、日立製作所が発表した2024年度第2四半期(2024年7~9月)の連結業績は、売上収益が前年同期比11%減の2兆3345億円、Adjusted EBITAが同54%減の2245億円、Adjusted EBITA率は9.6%となっている。ここでは、日立Astemoの持分法投資損益の悪化が影響し、3セクターでの実績としては、売上収益が前年同期比11%増、Adjusted EBITA は465億円増の2493億円、Adjusted EBITA率は10.7%となっている。 加藤氏は、「当期の売上収益は社内計画に対して約1100億円増加しており、Adjusted EBITAは140億円の上振れだった。国内IT市場でDXおよびモダナイゼーションの追い風を受けたDSSの成長と、送電網設備などの更新需要、再生可能エネルギー、データセンター関連ソリューションが好調なGEMが成長をけん引した」と総括した。 同社は、好調な第2四半期業績と旺盛な受注の獲得を背景に、2024年度通期業績を上方修正。2025年度からの新中期経営計画でどんな成長戦略を描くのか――2024中期経営計画により、次の成長に向けた土台作りが着実に進んでいる。