軽貨物車両の事故が多発…激変する“運送業界の最前線”に密着
日本全国を駆け巡り、人々の生活を支えている物流。その物流を担う長距離ドライバーの現状は有効求人倍率2.14倍(出典:国土交通省)で、深刻な人手不足に陥っている。 こうした中、さらに物流業界を悩ませているのが、働き方改革だ。長時間労働が常態化してきた運送業は、今年、時間外労働の上限が年間960時間に制限される。 物流の効率化など何も対策を取らなければ、2030年度には日本の輸送能力が約34%も不足すると推計されているが、どうすればドライバーの労働時間を減らしながら、大量の荷物を運び続けることができるのか――。 1930年、岐阜で誕生した「西濃運輸」は、戦後、長距離輸送の手段が鉄道しかなかった時代に、日本で初めて長距離トラック輸送を始めた。全国の都市に拠点をつくり、企業が必要とするモノを運ぶ。日本の高度経済成長を物流の面で支えてきた。
「セイノーホールディングス」(本社:岐阜・大垣市)は、売上高6300億円で、従業員数は約3万人。ライバルがひしめく運送業界で、企業間物流シェア1位を誇る。そんなセイノーの頭脳が、1日に6000便もの運行ダイヤを編成する運行部だ。 人手不足の中、4月からの規制にどう対応していくのか。「西濃運輸」運行部 北陸エリア担当の馰井道昭さん(44)は、丸一年かけ、あるプロジェクトを進めていた。
4月スタート予定の「金沢集約プラン」は、北陸エリアで各支店がバラバラに運んでいた荷物を金沢支店に集め、トラックを満載にして無駄なく運ぶ計画だ。これなら、少ないドライバーで多くの貨物を運ぶことができるが、そのためには、大幅な運行ダイヤの組み替えが必要だ。馰井さんは、「(機械的に組んだ)運行ダイヤを、仕事に誇りを持つ現場のドライバーに納得してもらえるかどうかが一番の課題」と話す。
2024年、年明け。馰井さんは直接現場に足を運び、担当者と話を詰める予定だったが、元旦に能登半島地震が北陸を襲った。道路は寸断され、貨物を運ぶこと自体が困難な状況。 セイノーは地震直後から動き、貸し切りのトラックで能登半島各地の避難場所に支援物資を運び届けた。