「発達障害」と「腸内細菌」の驚くべき「関連性」…自閉スペクトラム症を「腸から改善」する可能性を示した「衝撃の実験結果」
腸内マイクロバイオータの変化で自閉症の症状が改善する?
そうした腸の関与を調べるため、少々手の込んだ実験が行われました。まず、ヒトの自閉スペクトラム症児から採取した糞便中に含まれる腸内マイクロバイオータを、無菌マウスに移植します。つまり、糞便移植です。その後、自閉スペクトラム症児の糞便を移植されたマウスどうしを掛け合わせ、生まれてきた赤ちゃんマウスの行動を調べるのです。 その結果、自閉スペクトラム症児の糞便を移植された親から生まれ育ったマウスは、同じ行動を何度も繰り返す反復行動が高まり(こだわりが強く)、自発的な運動量も減り、社会性が低下するという、自閉スペクトラム様症状を示したのです。 次に、このマウスの脳で使われている遺伝子を調べたところ、糞便移植をしていないマウスと比較して560種類以上もの遺伝子の使われ方が変化しているものの、遺伝子自体に変異はありませんでした。 このことから、遺伝子自体に変異が入るのではなく、遺伝子の使われ方が変化することで自閉スペクトラム症が発症することが示唆されました。新たに使われるようになった遺伝子の中には、RNAのスプライシングに関与するものが多く見られました。RNAスプライシングとは、一つの遺伝子から機能などが異なる複数のタンパク質を作り出すことを可能にするしくみです。 実際、自閉スペクトラム症では、脳機能に関与する重要な遺伝子にスプライシングが多く見られ、そのため、遺伝子から作り出されるタンパク質が健常な場合とは異なっています。これが自閉スペクトラム症に特徴的な行動と相関することが報告されています。 次に、このマウスの大腸と血中に含まれる代謝物を解析したところ、他のニューロンの活動を抑えるニューロン(抑制性ニューロン)やニューロンの活動を抑える神経伝達物質(抑制性神経伝達物質)が減少していることがわかりました。なお、抑制性ニューロンは、抑制性神経伝達物質である-アミノ酪酸(GABA)を分泌し、グルタミン酸を分泌する興奮性ニューロンの活動を抑制します。