センバツ2023 1回戦 鳥取城北、戦い抜いた 持ち味発揮も及ばず /鳥取
第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)第2日の19日、鳥取城北は1回戦で東邦(愛知)と対戦し、3―6で敗れた。前回出場時の2021年に続く春通算2勝目はならなかったが、センバツ最多5回の優勝を誇る強豪相手に粘り強く戦い抜いた。スタンドの応援団は3年半ぶりに解禁となった大声援で選手たちを後押しし、試合後は惜しみない拍手を送った【野原寛史、竹田直人】 「行け行け城北! がんばれ城北!」 甲子園に戻ってきた声援とブラスバンドの演奏に背中を押され、ナインが聖地で持ち味を発揮した。4点を追う六回裏。相手投手の鋭い変化球を見極め、2死から2安打と押し出しを含む3四球を絡めて計3点を返すと、アルプススタンドは大きな歓声に沸いた。押し出し四球を選んだ前田拓来(ひらく)(3年)の父・省三さん(46)は「城北らしい粘り強い反撃だった。ここから追いついて」と力を込めた。 二回に先制を許し、四回にはバント安打やスクイズで翻弄(ほんろう)され3点を失うなど、序盤から東邦ペースで進んだ。それでも、アルプススタンドは相手側に負けない盛り上がりで選手たちを鼓舞。2安打と気を吐いた原田颯太(3年)も、声援が「背中を押してくれている」と感じたという。 21年のセンバツに出場したOBも駆けつけた。遊撃手だった松田龍太さん(19)は「リードされても中盤で追いつき、終盤で逆転する伝統の野球を見せてほしい」と話し、打線が3点を返すと仲間と共に喜び合っていた。 だが終盤に追加点を奪われ、反撃も及ばずゲームセット。応援団からは「よく頑張った」と健闘をたたえる声が上がった。六回に安打を放った三輪歩夢(3年)の父・知也さん(49)は「さらに力をつけ、また夏に甲子園に戻ってきてほしい」とねぎらった。 ◇大声援で一体感 ○…三塁側アルプススタンドには鳥取城北の生徒や保護者ら約1500人が応援に駆けつけた。野球部員で応援団長を務める田崎優太さん(3年)はチームのチャンスに大きな声で応援歌を歌った。「久しぶりに大声を出したので少し緊張したが、気持ちがいい。青春しているなと感じます」と笑顔。チアリーダーの三谷花蓮さんも甲子園が夢だったといい、「声出しの応援は一体感があってとても楽しい」と話し、懸命のエールを送っていた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球 ◇冬に磨いた球種、力に変え 鳥取城北・新庄空投手(3年) 夢にまで見たマウンドで大きく成長した姿を見せた一方、悔しさが残る結果となった。 2種類のフォークを軸に三振を奪う投球スタイルだが、この日は精度にばらつきがあった。中学時代からバッテリーを組む河西華槻(はづき)(3年)は「フォークの落差がなく、カットボールもあまり曲がっていなかった」。打者を追い込むまでの組み立てに苦しんだが、冬場に磨いたチェンジアップを生かし、中盤からは「これ以上失点できない」とギアを上げた。自己最速の143キロを連発した直球の球威で押すなど、フォークだけに頼らない投球術で強豪に立ち向かった。 3失点した四回のバント攻勢を「裏をかかれた」と振り返った。終盤にはフォークの制球が乱れ、目標の完投を果たせずに八回を投げ終えて降板。全国レベルを相手に力不足を痛感した。「この負けを反省して成長し、夏の甲子園は試合終了までマウンドに立ち続ける」。誓いを新たに聖地を後にした。