【陸上】インターハイ・男子ハンマー投でアツオビン・アンドリュウが高校新
7月28日(日)より福岡県・博多の森陸上競技場で行われているインターハイ陸上競技の大会初日、男子ハンマー投で花園高3年(京都)のアツオビン・アンドリュウが69m38の高校新記録を樹立して優勝を飾った。
高校記録樹立も「目指すは70m」
前回2位のアツオビンは今季4月に67m37を投げて以降、6月のU20日本選手権を67m52で制覇するまで、67m台を連投。高校記録68m99の更新を射程にとらえ、“いつ、どこで達成するか”が注目されていた。 それを高校生最高の舞台、最終6投目で実現。「先生やチームメイト、関わってくれた人たちが喜んでくれたので、うれしかったし、ありがたいなと思いました」と高校新Vの実感をかみしめた。
予選を65m90で通過したアツオビン。決勝までの約8時間、涼しさを得る工夫を考え、「寝るまではいかないですけれど、しっかりリラックスして、花園のチームメイトと和気あいあいと過ごせました」と気力を補充して決勝を迎えた。 決勝の1投目。「全然緊張はなかった」と言うものの、左ネットに引っ掛けてしまった。今季初めての1投目ファウルに動揺がちらついたが、コーチングエリアで木村卓弥先生から「OK、それでいいから」と笑顔で言われ、アツオビンは「技術的な感覚は自分でも良かったですし、先生のOKで救われたと感じます」と平常心で2投目に向かった。2投目は64m17。これで優勢を築くと、スイングからターン、振り切りまで淀みなく投げた3投目に大会新かつ高校歴代2位となる68m45をマーク。5投目も68m40とハイパフォーマンスを見せた。そして6投目。アツオビンは「高1からここでやってみよう」と決めていた手拍子をスタンドに求めた。 今季は「記録を狙いにいくと投げ急いでしまうので」という理由からガツガツとなる気持ちを抑えてきたが、ここで“解禁”。 視線と期待が集中するなか、とうとう高校記録を更新した。アツオビンの成長は技術面や記録だけでなく、心の余裕というところにも感じ取れる。「昨年は試合中、周りの選手の動きや記録を気にしすぎて、気持ちが揺れ動き、落ち着きがありませんでした。今年は自分に集中できている感じがして、そこは成長したところだなと思います」と話すのは木村先生。 アツオビン自身も「技術面や体重の増量だけでなく、メンタル面が成長した部分です。自分に集中して、周りを見ずにやってきたことを出せたと思います」と自負している。 達成感にひたる一方、アツオビンは満足しきっていない。「昨年インターハイで負けたときから、70mを投げて優勝すると話していたので……」と描いていた記録はもっと先にあった。「今日の6投目はうまくまとめきれずに無理やり離した投げでした。出力を上げたときのズレがなくなっていけば、74、75が見えてくるかなと思います」アツオビンが暑い夏に高く遠く打ち上げた高校新記録69m38が伝説になるのはまだ早い。 文/中尾義理 写真/中野英聡
陸上競技マガジン編集部