城氏が語る。A代表デビューの久保建英が18歳に見えない理由とは?
A代表デビュー戦で、ここまでの衝撃を受けたのは誰以来だろう。ワクワク感と「何かやるんじゃないか」という期待感。小野伸二のデビューも衝撃的だったが、久保は、それ以上のものを持っているように感じる。一言で言えば只者じゃない。もっと長い時間、久保のプレーを見たかったというのが正直な感想だ。 とにかくサッカーセンスがズバ抜けている。ボールをもらう前に、ピッチ上のどこに誰がいるかを把握してボールを持った途端に次のプレーに対する判断を終えている。その判断スピードは驚くほど早い。しかも、単に感覚でやっているのではない。常に周囲に目を配り、視野を広げ、情報を収集して瞬時にそれを処理し、流れを予見した上で次のプレーを選択している。小さい頃からバルセロナの育成で訓練されたものが身についているのだろう。だからプレーは18歳と思えないほど落ち着いて見える。 その象徴的シーンは後半43分にあった。中島からのボールを久保はワンタッチで大迫へ縦パス。大迫もそれをワンタッチで流し、そこに連携した中島がディフェンスの裏に走り込んできてゴールへ向かった。ファウルで止められたが、このプレーは久保、中島、大迫の3人の発想が同じでなければ成立しない。瞬時の判断力とリズム。そして先を予見する洞察力 。練習を重ね、試合で実戦して、やっと成功するようなプレーをいとも簡単にあの狭いスペースの中でやってのけるのだ。恐るべきセンス。次元が違う。 最初のシュートシーンもそうだった。大迫のスルーパスに久保が反応して右サイドからドリブルでバイタルエリアへ持ち込んだが、大迫のタイミングを理解していて、そこにボールが出てくることを予測していた。そして、ランニングしながら周囲を見て、一度、ドリブルのスピードをダウン。あえてディフェンスを引き付けておいて2人のマークの間を抜く。 すべてが計算しつくされたプレーだった。シュートは流れで打ってキーパーの正面となったが、左足の振りが速いためコンパクトに強いシュートを打てる。欲を言えば、もっと正確にコースを狙えたとも思うが、この上、ゴールまで奪うデビューは出来過ぎだろう。 次のプレーを考え、それを体現できるのは、技術の裏付けがあるからだ。だからプレーに力みや焦りがない。彼がピッチ上で、とても18歳に見えない理由である。 FC東京でのデビュー時は、まだ自分で強引に何かを仕掛けることしか頭になかった。だが、長谷川監督から周囲を活かすことを教えられ、俯瞰でピッチを見渡すようにプレースタイルが徐々に変化すると、試合でも長い時間起用されるようになり驚愕の進化を見せてきた。 この日も、久保が動くところへボールが集まったが、これも周囲が彼を意識してのこと。練習の段階で信頼度を勝ち取っている証だろう。また久保を止めるためにエルサルバトルのディフェンスがジャージを引っ張るファウルを犯したが、それでも彼は転ばなかった。フィジカルが強いだけでなく、ボールの持ち方とボディバランスがいいからできる芸当である。