開発者だからこその世界最軽量へのこだわり――退任した富士通クライアントコンピューティング 齋藤邦彰会長の歩みを振り返る
富士通からPC事業を分社する形で、2016年2月に発足した富士通クライアントコンピューティング(FCCL)。その初代社長を務めた齋藤邦彰取締役が、6月27日付で退任した。 【写真】2000年に発売されたPHS内蔵ノートPC「FMV-BIBLO LOOX」 齋藤氏は富士通(Fujitsu)ブランドのPC事業を長年に渡りけん引し、FCCLがLenovoグループと富士通との合弁体制となってからも、日本国内での開発/生産によるPC事業を推進し、日本のPC市場において強い存在感を発揮した。「世界最軽量ノートPC」の座を譲らないモノづくりを継続してきたのも、氏の“こだわりの経営”によるものだ。 この記事では、齋藤氏のこれまでの歩みを振り返る。
齋藤氏の略歴
齋藤邦彰氏は、1981年4月に富士通に入社。オフィス事業本部(のちの情報処理事業本部)でファクシミリ(FAX)のエンジニアとしてキャリアをスタートした。その後1991年に、パーソナルシステム事業本部に異動しPCの回路設計などを担当し、ノートPC「FMV-BIBLOシリーズ」(現在の「LIFEBOOKシリーズ」)などの開発にも携わった。 2002年には、パーソナルシステム事業部長に就任。2009年、パーソナルビジネス本部長として、富士通のPC事業全体の陣頭指揮を執るようになった。2010年からは執行役員、2014年からは執行役員常務として、PC事業と携帯電話端末事業を統括する「ユビキタスプロダクトビジネスグループ長」を務めた。 先述の通り、2016年2月に富士通のPC事業はFCCLとして分社化された。同時に、携帯電話事業も富士通コネクテッドテクノロジーズ(現在のFCNT)として分社化されている。その際に、齋藤氏はFCCLの初代社長に就任。2018年5月からLenovoと富士通との合弁体制になった“新生FCCL”でも、引き続き経営をリードした。 その後2021年4月1日、齋藤氏はLenovoグループ出身の大隈健史氏に社長のバトンを渡し、自身は取締役会長に就任した。この時の会見では、FCCL独自のAIアシスタント「ふくまろ」のキャラクターのかぶり物を、新社長に手渡すというパフォーマンスを行い、会場を沸かせた。 そんな同氏も2024年4月、会長を退いて非常勤の取締役となった。そして6月30日をもって取締役も退任することになった。