開発者だからこその世界最軽量へのこだわり――退任した富士通クライアントコンピューティング 齋藤邦彰会長の歩みを振り返る
AIアシスタント「ふくまろ」に強いこだわり
齋藤氏が、もう1つこだわってきたこととして、FCCLの個人向けPCに標準搭載されているAIアシスタント「いつもアシスト ふくまろ」がある。 この機能は、アプリを起動して話しかけると、アプリ名の由来にもなった「ふくまろ」が回答してくれるというものだ。2018年に登場して以来進化を続けており、2023年11月にはAzure OpenAI Serviceを通じて「ChatGPT 3.5」を活用できるようになった。これにより、ユーザーとのやりとりがより自然になり、幅広い話題にも対応できるようになった。 齋藤氏は、ふくまろに2つの役割を持たせた。 PCの利用促進 1つはPCそのものの利用を促進することだ。齋藤氏は「PCは何でもできるが、その使い方が変わらないため、特定の用途や一部のアプリしか使われなかったり、場合によっては何もできなかったりというケースもある。PCを利用するときに、画面表示や音声によってアシストしてくれるのが、ふくまろの役目」と語る。より幅広い層にPCの利用を広げるためのツールに位置づけているわけだ。 2021年からは、ふくまろの機能によって、高齢者を始めとする“デジタルが苦手な人”をサポートするサービス「ふくまろおしえて」を開始した。 「高齢者にとっても、オンラインが使えるか使えないかで、生活が大きく変わってしまう時代が訪れた。しかし、『PCは難しく、今から覚えるのは無理だ』という声があるのも事実。こうした“難しい”という敷居を、ふくまろによって取り払いたい」と齋藤氏はサービスの狙いを説明する。 もう1人の家族 ふくまろのもう1つの役割は「もう1人の家族」という用途だ。齋藤氏は「PCの利用をサポートしたり、新たな機能を簡単に使えるようにしたりといった『機能的価値』だけでなく、ふくまろが持つキャラクター性によって、愛着や癒しによる『情緒的価値』も提供できる」とする。 実際に使ってみると分かるが、ふくまろのパーソナライズ機能は、順次強化されている。家族を見分けて名前で呼んだり、好みを覚えて会話したりすることができるようになっている。PCをより身近に感じてもらうための仕掛けが用意されている。 齋藤氏は「ふくまろは、これからも進化を続ける。将来的には、より高い専門知識を持ったり、もっと生活に寄り添ったりといったことができるかもしれない」と語る。 FCCLは「人に寄り添ったコンピューティング社会をリードしていく」ことを経営の柱に据えてきた。それを体現する重要な役割を担うのが、ふくまろなのだ。 この取り組みは“長期戦”になることが想定される。だが、AIアシスタントである「ふくまろ」の存在は、人に寄り添うために重要だと齋藤氏は捉えている。