国民の過半数が賛成の「選択的夫婦別姓」が実現しないのはナゼ? 現役の“敏腕裁判長”が語る…最高裁判事が「全員65歳代後半」の深刻なリスク
最高裁判事が全員「60歳代後半」であることが抱える「深刻なリスク」
このような高齢化が、最高裁の判断にどのような影響を及ぼすか。 最近の分かりやすい例として、「選択的夫婦別姓訴訟」の2回にわたる最高裁大法廷判決における意見の分かれ方を見れば、一目瞭然と思われる。 まず、1回目の平成27年(2015年)12月16日の判決。夫婦同姓を強制する現行民法の規定を10人対5人の多数決で「合憲」とした。「違憲」の少数意見の5人は櫻井龍子(官僚出身)・岡部喜代子(学者出身)・山浦善樹(弁護士出身)・鬼丸かおる(弁護士出身)・木内道祥(弁護士出身)であった(任命順)。 次に、2回目の令和3年(2021年)6月23日の決定。同様に現行民法・戸籍法の規定を11人対4人の多数決で「合憲」とした。「違憲」の少数意見の4人は宮崎裕子(弁護士出身)・三浦守(検察官出身)・草野耕一(弁護士出身)・宇賀克也(学者出身)であった(任命順)。なお、宮崎裕子裁判官は戸籍上の氏が異なる「通称」使用者である。 2回目の大法廷判決であっただけに、合憲から違憲への判例変更が期待されたが、どうも、当初係属していた第二小法廷が長官を除いて2人対2人の同数に意見が分かれたため大法廷に回付したようだ。 「違憲」の少数意見に立った裁判官は、その間に全員入れ替わっているが、1回目の判決では5人中3人までが女性であり、2回目の決定でも4人中1人が女性であることが注目される。おそらく、最高裁判事15人中7人を女性が占めるに至れば、男性裁判官の一部の同調を得て多数派を形成し、違憲判断への判例変更が容易に行われると予想される。 しかし、女性裁判官の比率の低さ以前の深刻な問題がある。それは、最高裁判事の15人全員が60歳代後半という「年齢構成」である。 すでに世論調査では、青年・中年層を中心に、選択的夫婦別姓への法改正を支持する意見が過半数を占めてきている。それにもかかわらず、合憲判決が重ねられているのは、このような最高裁のいびつな年齢構成に原因があると指摘せざるを得ない。