2025年 原発“新増設”元年~半世紀ぶりの原発建設に沸く町とは~
■「今回、いよいよ!」~巨額プロジェクトと経済効果
美浜町の商工会関係者は、約半世紀ぶりの“新増設”に期待を膨らませる。 「福島の原発事故の前は予定地の付近で環境調査が行われていて、建設が始まるものだと思っていた。それがあの事故で止まった。今回、いよいよ!という考えだ」 美浜原発は1・2号機が廃炉となったが、3号機が稼働している。この再稼働に向けた対策工事の際やその後の定期検査などでは1日に1000人~2000人が必要となり、町も作業員でにぎわうという。4号機の建設が決まれば、人口約8600人の町で1兆円規模の巨額プロジェクトが動き出すことになる。地域への経済効果は計り知れない。
■原発建設費 電気代上乗せ案も
ただ、懸念材料は原発の建設費を誰が払うのかだ。 福島事故以降の安全対策費が高騰している。2015年の政府資料によると原発1基の建設費は4400億円と見積もられている。しかし、海外での建設費を参考にすると、今や原発は1基1兆円を超えるほど高額となっているのだ。 過去、電力会社は「総括原価方式」という建設費や維持費、人件費など総原価に一定の報酬率を乗じて電気料金とすることが国から認められていたため、赤字の心配なくコストを計上できていた。しかし、電力自由化後は建設費を確実に回収する手段がなくなり、巨額投資に及び腰になっている。 実は、この原発への巨額投資が国民負担となる可能性が出てきている。 次期「エネルギー基本計画」の改定案でも、電力会社への投資を促すための「制度設計を整備」するとした上で、「民間金融機関が取り切れないリスクについて、政府の信用力を活用した融資」などの方策を検討するとしている。 一体なんのことなのか? 具体的な議論はまだ行われていないが、経済産業省の会合では原発支援策の海外事例として、イギリスの「RABモデル」と呼ばれる制度が参考として提示されている。原発の建設費や維持費などを電気料金に上乗せして回収できるという制度だ。 つまり、自由競争のなかでは原発は“高すぎる”ため、電力会社は建設に踏み切れない。だから国が“電気料金に上乗せ”する形でコストを回収する制度を整えようとしているとみられる。 エネルギーの安定供給、脱炭素、そして安全保障のため、政府は原発の“新増設”に踏み込んだ。しかし、そのコストについては将来、なんらかの形でわれわれ利用者に影響してくるものと考えなくてはならない。 ※エネルギー基本計画のなかでは「建て替え」という言葉が使われているが、一般的に真新しい建物を建てることは「新設」や「増設」というため、この記事では“新増設”という言葉を使いました。