書籍『ライバルはいるか？』より（著者作成）

　「勝ち負けなんて必要ない」「他人と比べるのは無意味だ」。今の時代、そう考える人は多い。「みんな仲良く」が正義とされ、会社や学校で「誰かと競うこと」はほとんどなくなった。 その現状に警鐘を鳴らすのが、金沢大学教授の金間大介さんだ。モチベーション研究を専門とし、現代の若者たちを分析した著書『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』が話題になるなど、メディアにも多数出演している。その金間さんの新刊『ライバルはいるか？ ー科学的に導き出された「実力以上」を引き出すたった1つの方法』では、社会人1200人に調査を行い、「誰かと競うこと」がもたらす驚くべき価値を解明した。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「競争と成長実感の関係」を紹介する。 【この記事の画像を見る】 　「誰かと競うこと」は「悪」である。 　近年、とくに若い世代を中心に、こういった考え方が広まっているように感じる。 　しかし、競争することは本当に「悪」なのだろうか？ 　競争を排除し、「みんな仲良く」を徹底した「行き過ぎた協調社会」になったことで失われたものもあるのではないか。 　この問いに答えを出すために、今回、社会人1200人を対象にした大規模な調査を行った。 　ここでは、競争と「成長の実感」に関する意外な調査結果を提示しよう。 ●　ライバルの有無と成長実感の関係 　僕らはもっと明示的に、「小さな成長」を感じ取れるようになるべきだ。 　その方法の1つにライバルがある。 　と言ったら、さすがに唐突だろうか。 　でも、それを物語るデータがここにある。 　本研究における質問票調査では、回答者の成長実感をストレートに問うている。 　「この1、2年であなたはどのくらい成長していると思うか」 　という問いだ。 　回答は「とても成長している」を10、「全く成長していない」を1とし、サンプルの区分は例によって、ライバルが「現在いる」「かつていた」「一度もいない」の3通りだ。 　結果はインパクトのあるものとなった。 　平均値を含め、全体の分布において、「現在いる」が最も高くなっている。 　男性で24％、女性で36％も、ライバルの有無によって成長実感に差が出た。 　また、最頻値を見てみると、「現在いる」と「かつていた」が7、「一度もいない」が6となっている。 　さらに、「一度もいない」の回答者の10％程度が1（全く成長していない）を選択していることも特徴的だ。 ●　「ライバル」によって実感する「4つの成長」 　ただ、これだとまだ「成長」の概念が漠然としていて、解釈が深まらない。 　そこで本研究の質問票調査では、成長を以下の4つの要素に分けて、同じように質問している。 ①リーダーシップ ②チャレンジ精神 ③協調性 ④内省力 　この場合においても、各要素で「現在いる」が「かつていた」「一度もいない」を上回った。 　まとめると、ライバルが「現在いる」人は、全体においても、具体的な要素においても、最も成長を実感しているということだ。 　今回取り上げた4つの要素は、いずれも今の日本にとって不可欠な（というか、喉から手が出るほどほしい）要素ばかりだ。 　（本稿は、書籍『ライバルはいるか？』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です）