客の声を聞き、高機能と低価格を両立 小浜英之・ワークマン社長
── 2024年3月期決算は、2期連続の減益となりました。 小浜 円安の為替相場の一方、商品価格を据え置いたため、2回目の2年連続減益となりました。価格の据え置きに対しては異論もあるかもしれませんが、私たちが目指す商品は「高機能で低価格」です。 数字としては確かに減益ですが、価格を据え置くためには何をやるべきか、社員が集中して取り組んだことは今後のより良い商品開発につながると考えています。ただし、「3年連続の減益」は過去に例がありません。今期は増収増益を目指す方針です。 ── その具体策は? 小浜 ワークマンというと「職人向け」のイメージが強いですが、2018年からはアウトドアやスポーツウエアなどを扱う店舗「ワークマンプラス」を展開しています。20年からは女性向けの店舗「#ワークマン女子」もオープンしました。「#ワークマン女子」の出店を進め、客層拡大を図ることで売り上げを増やす考えです。 ── 客層拡大にかじを切った背景は? 小浜 少子高齢化で日本の人口が減り、技能を持った職人も減っている事情があります。チェーンストアは客数を増やすことが経営上、非常に重要です。そのためには客層を拡大する必要がありますが、地域のホームセンターなどとの差別化を図るため、自社開発のプライベートブランド(PB)商品を充実させるしかないと考えました。 優れたPB商品があれば客はきっとリピートしてくれるし、その店の固定客になってくれるからです。客層拡大といっても、従来の「職人向け」を重視する姿勢は変わりません。ワークマンとして毎年、職人向けの新商品を100アイテムほど開発しています。私たちは職人さんや工場で働く人に育ててもらいました。職人にも認めてもらえる商品開発とサービスを今後も充実させます。 ── ワークマンプラスでは、キャンプやアウトドアのウエアをPB商品化しました。 小浜 「今までにないもの」を作ることは簡単ではありません。これまでのような作業服を作っても差別化につながらず、社員とともにPB化の商品開発について模索を続けました。市場調査を続ける中で、アウトドアウエアの機能性を私たちが作っていた作業服に合体させられないかという発想に行き着きました。