投資総額100億円! 急成長・コープさっぽろの物流戦略とは 「物流の2024年問題は、すでに先取り解決済み」
新たな取り組みを続々と導入した「フローズンセンター」
この10年の間、加速度的に物流改革を実現してきた北海道ロジサービスですが、その歩みはさらに続いています。 江別市にある物流センターでは、冷凍商品の物流拠点として「フローズンセンター」が2024年6月から本格稼働。これをきっかけにコープさっぽろの宅配事業では、冷凍商品の取扱品目を増やし、販売構成比率のアップを目指します。
このフローズンセンターでは、新たな取り組みを続々と導入しています。 プロジェクションマッピングの仕組みを応用した「プロジェクション・ピッキングシステム」では、プロジェクターとセンサーを組み合わせて、作業員が瞬時に音や光で判断。ピッキング作業の効率化や品質の向上を図ります。 高橋「このプロジェクション・ピッキングシステムはまだメーカーと開発調整段階ですが、物流業界で大きくこのような仕組みを使うところはうちが初めてでしょう」
このほかにも高速で商品の入出庫を行える「シャトルラック」、冷凍商品を入れるジェットシッパーの組み立てロボットの導入。 さらにはトラックに積むカゴに出荷商品を入れる作業を行う日本初の半自動積み付け機器をメーカーと共同開発したり、日によって凸凹がある出入荷をコントロールして標準化するシステムの実証実験などを行ったりしています。 高橋「江別の物流センターでは、冷凍商品を入れる折りたたみジェットシッパーを1日8000個も組み立てています。 これまでは複数の作業員が専任で1日中手動で組み立てていましたが、専用ロボットの開発により労力も時間も効率化。サポート要員が1人いるだけでよくなりました。 出入荷の標準化は、物流だけでなく店舗にとっても人的・時間的な効率がアップするので、メリットはかなり大きくなります」
まだまだ伸びしろのある宅配事業
このフローズンセンターには47億円、さらに常温商品の工程にも60億円を投資するなど、現在、総額100億円以上の資金を投入して物流センターを強化しています。 高橋「コロナ禍直前の2019年に物流拠点への大型投資を決断し、そこからはとにかくスピード重視でここまできました。これだけの資金を投入する目的は、宅配事業をより一層成長させるためです。 宅配事業は右肩上がりで伸びており、全国の生協と比べてもコープさっぽろにはまだまだ伸びしろがあります。数年前に比べてすでに1.5倍の物量を取り扱っており、さらなる宅配事業の成長を見越すと、物流拠点のパワーアップは不可欠です」 そのスピード感、施策のバリエーションの多さを引き出す原動力は、コープさっぽろの強力なリーダーシップ、そして課題解決への強い思いがあります。 高橋「我々には北海道を扱う物流インフラという『社会的使命』への自負があります。 その思いを胸に、コープさっぽろと長年積み上げてきた『改善の文化』を生かしながら、それ以外の取引先も巻き込んで大胆に物流改革を実践してきました。何よりも重要なのは、課題解決を常に模索することとスピード感です」 北海道ロジサービスでは物流の2024年問題は、すでに先取り解決済みと胸を張る高橋さん。道民の生活を支える効率的な物流網の確立を目指し、さらなるチャレンジへの熱意とスピード感はますます加速していきそうです。 構成・取材・文:久遠秋生 撮影: 新津隆將 図版作成:WATARIGRAPHIC デザイン:山口言悟(Gengo Design Studio)