大手が撤退した国産アーチェリーを復活 町工場2代目が磨く「小さな会社だからこそ」の強み
超小型モビリティーにも着手
西川精機製作所ではほかにも、カヌースラロームゲートシステムやカーボンフリー超小型モビリティー、雑穀用脱穀機なども開発しました。 カヌースラロームゲートシステムは、素材が普段から扱っていた塩化ビニル樹脂だったことから、加工のノウハウを生かして開発。精度や品質が評価され、国際カヌー連盟が国際大会での使用を認めた2社のうちの1社となり、日本では国体(現・国民スポーツ大会)などで採用されています。 西川さんが現在注力しているのが、超小型燃料電池モビリティーの開発です。東京都の「令和5年度TOKYO地域資源等を活用したイノベーション創出事業」に採択され、トヨタ紡織と日本大学との産学連携で開発を進めています。 トヨタ紡織が独自開発した燃料電池「FCアシストシステム」を用いて、特定小型原動機付き自転車の保安基準に準拠した四輪車をつくる計画です。シャシーやボディーなどはすべてオリジナルで開発します。 2023年12月から開発が始まり、スタートから3年以内での販売を目指しています。 特定小型原動機付き自転車は16歳以上なら免許不要で運転できます。免許を返納した高齢者、免許を持っていない人など、交通弱者の解消に向けた活用が期待されます。
工場の一角を芸術家に提供
西川さんは工場の一角を、創作活動に使える工房として芸術家に開放しています。 きっかけは、2011年と2014年に東京都の「産学連携デザインイノベーション事業」に参画し、東京芸術大学とプロジェクトを進めたことです。そこで、卒業後に創作活動が思うようにできない芸術家の存在を知りました。 西川さんは2016年、東京都地域中小企業応援ファンドの助成対象事業の採択を受け、工場の一部を工房としてリフォームしました。 西川さんは「芸術家を支援するようになったことで、我々の感性や商品のデザイン性を向上させようという意識が高まりました」と話します。 超小型燃料電池モビリティー開発プロジェクトでもデザインを重視し、ボディーを成型の自由度が高い樹脂でつくる予定です。