【トランプ爆勝!】その勝因と今後の日米関係のキーワードは「不安」と「安心」
2期目のトランプ政権に付きまとう「不安」
それでは、2期目のトランプ政権に「不安」はないかと言えば、2点ある。第一に、第二次世界大戦後の民主主義陣営を牽引してきた「アメリカの民主主義」が衰退していくことに対する不安だ。 1期目と2期目のトランプ政権で、本人の発言はほとんど変わっていない。最も異なるのは、周囲の陣容である。 1期目の時には、マイク・ペンス副大統領、ジェームズ・マティス国防長官、ジョン・ボルトン大統領安保担当補佐官……と、信頼を置くに足る重鎮たちが、しっかり脇を固めていた。大統領がどんな「放言」をしようと、部下たちがうまくいなしたり、懐柔したりして「軌道」を戻していた。 ところが2期目には、こうした「信頼を置くに足る重鎮たち」がほとんどいない。唯一、1期目に続いて要職を務めそうなのは、マイク・ポンペオ前国務長官くらいだ。 そうなると、トランプ大統領が、専制国家の独裁者のように振る舞うリスクが出てくる。日本を含む西側諸国は、ただでさえ、そうした専制国家に手を焼いているのに、アメリカまでそうなったら大変である。もちろん、一番混乱するのは、アメリカ国内だろうが。 二つ目の不安は、石破茂首相との「相性」だ。1期目の時代、トランプ大統領は西側諸国のリーダーたちとまで「敵だらけ」だった。エンゲラ・メルケル独首相とは衆人環視の中で大ゲンカしたし、マルコム・ターンブル豪首相とは電話会談中にブチ切れて、電話を叩き切ってしまった。 そんな中で、「友人」が二人だけいた。日本の安倍晋三首相と、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相だ。安倍元首相の側近によれば、「多い時は週に3回もトランプから電話があった」という。二人が重ねた「ゴルフ外交」は、世界も羨(うらや)んだものだ。 そんな安倍元首相の「最大の政敵」だったのが、石破首相である。当然、そうした情報はトランプ側にも行っているに違いない。 そもそも、安倍元首相のことを考慮しなくても、トランプ大統領と石破首相の「相性」がよいとは思えない。石破首相はトランプ大統領が大好きなゴルフをやらないし、石破首相が大好きな酒は、トランプ大統領が飲まない。 そもそも、石破首相が持論である「アジア版NATO(北大西洋条約機構)創設」を口にしただけで、トランプ大統領は「オレはNATOそのものが嫌いなんだ!」と激昂してしまいそうだ。日本政界一の読書家で理論家である石破首相と、「思いつきの放言癖」が絶えないトランプ大統領は、性格的にも、ウマが合いそうには思えない。 それでも、石破首相の方が合わせないといけないから、おそらくはペルーAPEC(アジア太平洋経済協力会議)とブラジルG20(主要国・地域)の首脳会議が終わる11月19日の後、帰路にアメリカに立ち寄ってトランプ氏と接触する道を探るだろう。まさに、2016年11月に安倍首相が行った手法だ。だが、そこで「対面」に成功したとしても、今後の関係構築に不安は拭(ぬぐ)えない。