人口800人の村で暮らすトランスジェンダーのリアルライフ 「あんたはええ人じゃ」100歳の親友と家族、支え合い頼り合い
直感を信じ、エコツーリズムのプログラムを企画するため、2010年に新庄村に移住した。 ▽「大正解」なカミングアウト 「自分や他人に嘘をつきながらぎりぎりのラインで生きていた。これからは自分に誠実に生きたい」 40歳の誕生日を迎えた2013年10月、自身のフェイスブックでトランスジェンダーであることを打ち明けた。 フェイスブックでのカミングアウトは「清水の舞台から飛び降りたような感覚だった」という。温かい言葉をもらった一方で、新庄村の住民から「自分は認めない。あなたを男性だとは思えない」と言われたこともあった。「当時は性同一性障害のことを理解している人はほとんどいなかったと思う」と推察する。 その翌年に、岡山市の自然食品販売会社で働いていた幸さんに仕事を通じて出会った。「声のトーンは高いけど、短髪でボーイッシュな人だと思っていた」。幸さんはホルモン治療を受ける前の崇来人さんの初対面の印象をそう語る。
幸さんに直接カミングアウトしたのは対面2度目。別のマイノリティの知人らと話している中で打ち明けた。 「体は女性型だけど、心は男性。だから男性として生きていきたいんだ」 そう話した崇来人さんに全く悲観的な様子はなかったと幸さんは振り返る。幸さんはLGBTQについてほとんど知らなかったが「トランスの人に対する印象が根付いた。タイミングも方法も、大正解なカミングアウト」と受け止めた。 崇来人さんも「自分のことを説明しないと、相手はどう扱えばいいのか分からないし、自分の望まない扱われ方をされてしまうこともある。渋っていると後々修復にエネルギーを使う」と説明する。 ▽家族の存在 崇来人さんが新庄村で「男性」として生きる大きな助けになったのは、家族の存在だ。2016年3月、パートナーとなった幸さんが、前夫との息子が小学校に進学するタイミングで新庄村へ移住。一軒家での3人暮らしが始まった。