斎藤元彦兵庫県知事を再選に導いた立花孝志氏の3つの”ウソ”と『オールドメディア』の犯した過ち
今なおゴタゴタが続いている『兵庫県知事選挙』。返り咲いた斎藤元彦知事に関しては新たな疑惑も生じて、兵庫県はカオスな状況にある。 【写真】立花孝志氏 青山のクラブで美女に囲まれウハウハの夜 『SNS劇場型』と呼ばれた今回の選挙ほど、SNSが当落に影響を及ぼした選挙はこれまでになかったのは確かだ。 斎藤氏はSNSを駆使して勝利を勝ち取ったが、それ以上に選挙に影響を与えたのが『NHKから国民を守る党』党首の立花孝志氏だ。立花氏の“援護射撃”によって、斎藤氏の応援団が一気に増え、それまでの劣勢を一気に巻き返したのは言うまでもない。 ◆斎藤氏はパワハラをしていない 立花氏は、政見放送でも街頭演説でも、 「斎藤氏はパワハラをしていない」 「元県民局長は自身の不祥事が発覚するのを恐れて自殺した」 と持論を展開、自身のYouTubeやXで発信し続けた。 そのため多くの人たちが 「パワハラもおねだりもなかった」 「テレビで報じられていることは虚偽だ」 と解釈し、中には“斎藤氏が告発されたのは改革を恐れる反対勢力の策略”という陰謀論を提唱する人まで出てきた。その結果、斎藤氏応援に回る人が増えたわけだ。 しかし、立花氏が発言していることは事実なのだろうか。 立花氏の発言を信じた人たちは、こんな報道があったことを、忘れてしまったのか。 兵庫県議会文書問題調査特別委員会が9700人の県職員を対象に行ったアンケートでは、6725人が回答しており、知事のパワハラを「目撃(経験)等により実際に知っている」と140人が回答し、「目撃(経験)等により実際に知っている人から聞いた」と800人が回答。 さらに「人づてに聞いた」と回答した1911人を加えると、回答者の4割超が何らかの形で斎藤知事のパワハラを知っていたことになる。 また、8月30日の百条委員会でも、匿名ではない証言が相次いだ。 20メートル歩かせたことで斎藤知事から叱責を受けた東播磨県民局長は、 「強い叱責は想定外で、頭の中が真っ白になった」 「社会通念上必要な指導ではなく、理不尽な叱責だと感じている」 と陳述している。 ◆ニュース映像を切りぬいたもの そして、百条委員会の8月30日の証人喚問で、斎藤氏は職員に対して 「厳しい叱責をしたことや付箋を投げた、机を叩いた」 ことを認め、そのうえで 「必要な指導だと思っていたが、不快に思った人がいれば、心からお詫びしたい。パワハラかどうかは私が判定するというより、百条委員会などが判定するものだ」 と述べているではないか。これらの報道は全てフェイクだというのだろうか。 しかし、現在もまだ 《(百条委員会の委員長である)奥谷謙一県議会議員がパワハラはなかったと語っていた》 という動画が拡散されている。 この動画は8月に放送されたテレビのニュース映像を切りぬいたものだ。奥谷県議が語っていることを最後まで聞けば、そんなことは言っていないと分かるのだが、いかにも“パワハラはなかった”と語っているように意図的に切り抜いた動画だ。 しかも画面上の日付も消されている。法律の専門家である、弁護士までもこの動画を信じて拡散しているのには呆れるしかない。 パワハラ認定がなかったと結論が出ているなら、なぜその後も百条委員会がまだ続いているのか、おかしいとは思わないのだろうか。 また「パワハラはなかった」という根拠について、立花氏は、亡くなった元県民局長は「10年間で10人と不倫」しており、それが公になることを恐れて自殺したと考えられ、パワハラが原因ではないと主張している。 その「10年で10人と不倫」という情報を得た経緯について、当初、音声データを片山安孝元副知事から直接受け取ったとしていたが、片山氏は“立花氏と会ったこともない”と言っていることが産経新聞の報道で明らかになった。 立花氏は早速、11月5日に公開した『N党立花氏「面識一切ない」斎藤氏失職に伴う知事選巡り、兵庫元副知事が書面で説明 と言う産経新聞の記事について』(原文ママ)と題する動画を自身のYouTubeで公開し、 「嘘をついてました」 とあっさり謝罪。しかも「嘘も方便」とまで言ってのけている。 その「10年で10人と不倫」に関しては、立花氏は政見放送で語っていたのだが、その根拠は何だったのか。 ◆「そのまま10人と言っちゃったみたいです」 氏が、11月15日に姫路駅北側において演説した際、聴衆から根拠を尋ねられて、それに答えている動画が投稿されている。そこで立花氏はこう答えているのだ。 「根拠はめちゃめちゃ薄いです。10人くらいと言ってる人が1人いたかな」 と。耳を疑ってしまう。続けて、 「複数という言い方が2、3人とは聞こえない。10年くらいで複数ということは、やっぱり5、6人は最低いるのか。人によっては10人くらいいるって言う人もいる」 続けて 「政見放送のときに10年と10人が引っかかって、そのまま10人と言っちゃったみたいです。まあ、ええかなって感じみたいな」 これは勢いで言ってしまったと釈明しているが、その後の演説でも語っている。 何だこりゃ、だ。11月29日になって立花氏がパソコンの中身を公開しているが、この時点で、彼が元県民局長のパソコンの中身を自分で確認したようには思えない。根拠が薄いどころか、どこにあったというのだろうか。 “百条委員会が不都合な事実を隠すために情報を出さなかった”、“不倫が本当の死因だとずっと隠していた”などと、いま立花氏の矛先は奥谷県議に向けられている。これは10月24日、25日に開催された委員会であった証人尋問の映像を公開しなかったことを指して言っていると思われるが、11月25日に配信されたテレビニュースで、兵庫県議会文書問題調査特別委員会宛に斎藤氏が代理人弁護士を通じて 「(映像が)正式に公開されるまで、議員が個々に報道機関に情報を伝えたり、SNSで意見を述べることがないように」 申し入れていたことが報じられた。つまり斎藤氏が公開を望んでいなかったわけだ。 立花氏の言っていたことは違うことが分かる。 少なくともこの3点が“嘘”だったと明らかになって、立花氏はどう反論するのか、また斎藤氏を応援した兵庫県民と立花信者はどう思っているのだろうか。 確かにテレビ、新聞など大手メディアにも問題があるが、SNSで拡散されたデマを鵜呑みにし、自分で精査しようともせず《SNSには真実がある》とするのはあまりにも短絡的で危険だ。 日本のテレビは公正を保つためということで選挙期間中は候補者に関する報道はしない、できないことになっている。だが、SNSで飛び交っているデマのファクトチェックくらいはするべきではなかったのか。 敗北宣言されてしまった『オールドメディア』だが、まだまだやらねばならないことは残っている。取材のプロたちの意地を見せる時ではないかーー。 文:佐々木博之(芸能ジャーナリスト)
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