シリア・アサド政権「あっけない」崩壊の裏事情、弱まるイランの影響力、イスラエル一強にトルコはどう出る
■反政府勢力とアサド政権と交わされた密約 ①イスラエルとヨルダンの安全を脅かす勢力だから粛清する、②南部の拠点を捨てて北部に移住し、北部の反政府勢力に加わる、③アサド政権と和解し、以下のような条件をのむ。 それは、アサド政権をシリアの正式な政府であると認めること、反政府活動をやめること、銃兵器をシリア軍に渡して武装解除すること。 同時に、和解の条件としてアサド政権は、住民が引き続き南部で暮らすことを認める、アサド政権に拘束されている南部の反政府活動家を全員解放すること、反政府活動の疑いでの南部住民の取り締まりをやめること、そして反政府勢力の支配地域にシリア政府は手出しをしないことを提示した。
すなわち、南部の反政府勢力は沈黙したまま同地域を実質的に支配する一方で、南部をアサド政権が支配しているという形にすることに協力せよ、という内容だ。そうすれば、南部の住民は平穏・安全な生活を続けられるという内容だったが、結局③を南部は受け入れて合意が成立していたことになる。 こうして数年は静かな状況が続いていたのに、今回反政府勢力の自由シリア軍が腰を上げた。2022年からトルコ支援で厳しい訓練で鍛えられた戦闘員とシリア政権崩壊後の体制など練りに練った作戦と計画を準備した。
満を持して2024年11月にレバノン停戦が発効すると同時に、北西部から南下を続けた。アレッポ、ハマー、そしてホムスと進出し、反政府のシリア民主軍が北東部から進出し、東部のデリゾールを制覇した。 そのような動きを見た南部の勢力も、政権との合意を反故にして抗議活動を再開した。だが、南部では住民がデモを行い、アサドの銅像を倒している程度。それなのに、なぜイスラエルはゴラン高原にまで増派したのか。 これは、「シリアの反政府勢力は武装イスラム原理主義の過激派だ」と国際社会にアピールし、イスラエルが今後シリアを攻撃する大義名分をつくるためだ。