日本経済の持続的成長を後押しする個人消費 カギを握るのは”家電の故障”
先の参院選では、アベノミクス、つまり経済対策はさほど話題にならなかった印象がありますが、秋頃までには10兆円を超える超大型の景気対策が発表されるとの予想もあり、再び国民の関心が経済に向かいそうです。政府の景気刺激策と聞いてパッと思いつくのは公共投資ですが、日本経済の6割を占めるのは個人消費なので、そこを上向かせる必要があります。 個人消費が上向かない限り日本経済の持続的成長はあり得ませんから、景気対策は個人消費の活性化につながるかが最も重要な視点になります。そこで個人消費に目を向けると、参院選前の6月には消費増税の先送りが決定されるなど、芳しくない状況にあります。今回は個人消費の弱さについて再考したうえで、今後の動向を第一生命経済研究所の藤代宏一さんが考察します。
個人消費の足取りは依然鈍いまま
2014年4月の消費増税率引き上げから6カ月が経過した11月、当時15年10月に予定されていた消費増税の先送りが決定されました。理由は、消費増税の影響が予想以上に強く個人消費の減速が深刻だったからです。 しかしながら、その後も個人消費の足取りは鈍く、15年に入ってもほとんど回復が見られず、そして16年入り後は度重なる金融市場の混乱も影響して、企業収益が減益に転じる下、消費の最重要ファクターである賃金増加シナリオにも疑問符が付き、消費が回復力を増していくとの楽観的な見通しすら描きにくくなりました。こうした状況を踏まえ、政府はこの6月に17年4月に実施予定であった消費税率引き上げを19年10月に先送りしました。消費増税に耐えられるほど個人消費が強くないと判断したのです。
このように個人消費は14年4月以降、停滞が続いているのですが、その弱さは不可解な部分があります。確かに消費増税による負担増と円安による食料品など身近なモノの値上がりは家計に重くのしかかりましたが、一方で15年に入ってからは原油を中心とする資源価格下落の影響で広範な品目で物価が下落、実際、足元の消費者物価指数は下落基調にありますので、家計の負担は軽減されています。 そして何よりも、消費にとって最も重要な所得が増加しているので、ここまで消費が停滞するのは違和感があります。所得(実質雇用者報酬=名目雇用者報酬を物価調整したもの)は、13年中こそ物価上昇に追いつかず減少したものの、14年4-6月期以降はほぼ一貫して増加しており、その水準はすでに消費増税前を上回っています。常識的に考えれば個人消費は増加するはずです。