「18歳頂点」学力から脱却、横浜創英の本気改革 工藤勇一校長退任も、学校の方向性は変わらず
いよいよ本丸の教育課程に手をつける
工藤前校長のリーダーシップもあり、この4年間で、かなりドラスティックに学校改革を進めてきたように見受けられますが、それでもまだ教科学力中心で、学びの転換を軸にしたものになっていないようです。 「日本の中等教育で連綿と続いてきた大学受験をゴールにした広く浅い教育から脱却して、自分の強みやとがりを、この創英で発見できるカリキュラムを作らなくてはならない」という工藤氏からの投げかけは構想が大きすぎて、簡単には「できる」と言えなかったという本間氏。 それでも考えれば光は見えるはずと、工藤氏が教育改革に手をつけた年に入学した生徒が高校1年生になる2025年度に向けて、ミドルエイジを中心とした学び方改革PT (12名)を立ち上げ、学習指導要領を読み解きながらいよいよ本丸の教育課程に手をつけていったのです。改革の柱は次の3つでした。 1. 教育課程そのものを編成しなおす 2. 高校1年生から自由選択制の大幅な拡大 3. 学年制を柔軟に運用した授業形態 新しい教育課程の理念は、1.画一的な教育から脱却して個を軸とした学びへの転換、2.社会とつながる実学を軸とした学びへの転換、3.課題解決力をつけるための探究型を軸とした学びへの転換の3つです。 まず、2025年度から2期制に移行すると同時に、カリキュラムも大幅に改訂し、自由選択の枠を拡大します。2期制を取っている学校はたくさんありますが、多くの学校では、単位認定は通年になっています。しかし、これでは履修科目は膨れるばかり。そこで、半期ごとに単位を認定することにしました。 これによってカリキュラムの大幅な圧縮が可能になります。例えば、必履修単位の数学1は高1の前期で終えられるようになるので、数学を取りたくない生徒は、それ以降数学は取らなくていいし、逆に高1の後期から数2を学ぶことも可能になります。 歴史も通常は全史を学ぶために11単位が必要とされていますが、横浜創英では前期に必履修単位の歴史総合を学び、2学期は古代史と明治史を置き、明治史を取る生徒は、学校ではそれ以前の通史を学ばないという選択をしたとみなします。代わりに生徒は自分の学びたい教科を履修して学ぶことができます。 生徒や保護者からは「学ぶ内容が浅くならないのか」「大学受験に対応できるのか」という不安が出てきそうですが、何から何まで学校で教えなくてはいけないことはない。それよりも、生徒が主体的に学ぶ時間や、社会とつながりながら学習をする時間に回したほうがいいというのが、横浜創英の考え方。 これからの学校は、社会で活躍する準備の場所に変わっていかなくてはならない。本間氏も、18歳の頂点学力の先を見てこなかったという自らの反省もこめて、社会で必要な経験の場を学校がどれだけカリキュラムに落とし込めるかを重要視したと言います。 「前述の通り、社会は大きく変わってきており、大学受験もすでに総合型選抜などの年内入試が5割を超えています。2040年には大学受験者人口も現在の63万5000人から50万人に減ると言われており、そうなったら現在の大学の4割がつぶれる時代がやってきます。大学も生き残りをかけて、年内入試を今後ますます増やしていくでしょう。その時に、問われるのが、これまで何をしてきたか、これから何をしていきたいのかを自分の言葉で語れる力です。だから与えられるのを待つのではなく、自ら取りに行く力を育てる必要があるのです」(本間氏)