日銀・黒田総裁会見1月23日(全文1)物価見通しの下振れは一時的
日銀の黒田東彦総裁は、金融政策決定会合後の23日午後、記者会見を行った。 ※【**** 00:35:30】などと記した部分は、判別できなかった箇所ですので、ご了承ください。タイムレコードは、「日銀・黒田総裁が定例会見(2019年1月23日)」に対応しております。 【動画】日銀・黒田総裁が定例会見(2019年1月23日) ◇ ◇
金融政策決定会合の中身と物価・経済の情勢の見通し
朝日新聞:今月の幹事社の朝日新聞、【サイトウ 00:00:16】ですけどよろしくお願いします。初めに幹事から3点ほどお聞きします。1問目ですが、本日の金融政策決定会合と、物価・経済の情勢の見通しについてご説明ください。 黒田:本日の決定会合では長短金利操作、いわゆるイールドカーブ・コントロールの下で、これまでの金融市場調節方針を維持することを賛成多数で決定しました。すなわち、短期金利について日本銀行当座預金のうち、政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用するとともに、長期金利については10年物国債金利が0%程度で推移するよう長期国債の買い入れを行います。その際、長期金利は経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし、買い入れ額については保有残高の増加額、年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買い入れを実施します。 また、長期国債以外の資産買い入れに関しては、これまでの買い入れ方針を継続することを全員一致で決定しました。ETFおよびJ-REITの買い入れについては年間約6兆円、年間約900億円という保有残高の増加ペースを維持するとともに、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて買い入れ額は上下に変動しうるとしています。 本日は展望レポートを決定、公表しましたので、これに沿って先行きの経済・物価見通しと、金融政策運営の基本的な考え方について説明いたします。 わが国の景気の現状については、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働く下で緩やかに拡大していると判断しました。やや詳しく申し上げますと、海外経済が総じて見れば着実な成長を続ける下で輸出は増加基調にあります。国内需要の面では企業収益が高水準で推移し、業況感も良好な水準を維持する下で、設備投資は増加傾向を続けています。個人消費は雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れを伴いながらも緩やかに増加しています。この間、住宅投資は横ばい圏内で推移しています。公共投資も高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移しています。以上の内外需要の増加を反映して、鉱工業生産は増加基調にあり、労働需給は着実な引き締まりを続けています。 また、金融環境は極めて緩和した状態にあります。わが国経済の先行きについては、海外経済は総じて見れば着実な成長を続ける下で、設備投資の循環的な減速や消費税率の引き上げの影響を受けつつも極めて緩和的な金融環境や、政府支出による下支えなどを背景に、2020年度までの見通し期間を通じて景気の拡大基調は続くと見込まれます。今回の見通しを従来の見通しと比べますと、2018年度は下振れていますが、2019年度、2020年度はおおむね不変です。 次に物価面では、消費者物価の前年比はプラスで推移していますが、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べると弱めの動きが続いています。物価の上昇を遅らせてきた諸要因の解消に時間を要している中で、中長期的な予想物価上昇率も横ばい圏内で推移しています。もっとも、マクロ的な需給ギャップがプラスの状況が続く下で、企業の賃金・価格設定スタンスが次第に積極化し、家計の値上げ許容度が高まっていけば実際に価格引き上げの動きが広がり、中長期的な予想物価上昇率も徐々に高まるとみられます。この結果、消費者物価の前年比は2%へ向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられます。今回の見通しを従来の見通しと比べますと、原油価格の下落を主因として、2019年度を中心に下振れています。 リスクバランスについては経済・物価ともに下振れリスクのほうが大きいとみています。物価面では2%の物価安定の目標に向けたモメンタムは維持されていますが、なお力強さに欠けており、引き続き注意深く点検していく必要があります。なお、展望レポートについては片岡委員が消費者物価の前年比について先行き2%に向けて上昇率を高めていく可能性は、現時点では低いとして反対されました。日本銀行は2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続します。 マネタリーベースについては、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで拡大方針を継続します。政策金利については、2019年10月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持することを想定しています。今後とも金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済・物価・金融情勢を踏まえ、物価安定の目標に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行います。以上です。