白亜紀末大絶滅はなぜ起きた(下)-南米アルゼンチン植物化石のメッセージ
さて隕石衝突仮説以外にも、まだまだ検証されなければならない諸々の仮設が幾つかあることを忘れてはならないだろう。例えば火山の大噴火や海水線の減退、地殻活動の変化、生物種間における競争、伝染病の伝播などの説がこれまでにとりあげられている。「隕石の衝突」はあくまで恐竜絶滅に関する「仮説」(の一つ)にすぎない。こうした仮説を一つ一つ検証する必要がある。世界各地における絶滅におけるデータを丹念に調査する必要がある。さまざまな生物グループからのデータを比べてみる必要も(当然)ある。 今回の植物化石からのメッセージを通して、我々はかなり興味深い重要なジグゾーパズルのピースの一つを「手に入れることができた」と言えることはできるだろう。しかし恐竜を含むその他の生物グループの白亜紀末大絶滅の原因解明に向けて、「我々はようやくその入り口に足を踏み入れだした」と言えばおおげさだろうか? この生物史にさん然と輝く一大ミステリー。まだまだ「分からないことが実にたくさんある」という事実と、非常に限られた断片的なデータ(証拠)しか手に入らないという状況は、研究者にとってジレンマとなり得る。しかしまだ解明されていない大小様々な数々の謎が手付かずのまま我々の目の前に横たわっているように、(白亜紀末大絶滅の研究に携わる者の一人として)私には映る。