「仕事ができる/できないの境界が描かれて……」“絶対に立ち止まれない”究極のお仕事ミステリは、一体どのように誕生した!?
面白さに出会い直す
森 そもそも、生放送を小説の題材にしようと思いついたのは、清張賞受賞直後に観に行ったトークライブがきっかけでした。南海キャンディーズ・山里亮太さんが一人で喋り倒す「山里亮太の140」へ行ったんです。トーク内容については「皆さんは会場を出たら記憶を失う魔法にかかります」と言われているので、詳しくはお伝えできないんですが(笑)。ただ、その場でテレビの生放送についても言及されていて、「生放送で何か事件が起きたら面白そう……!」と興味を持ちました。 荒木 小説に出てくる「ゴシップ人狼」という企画も、テレビ番組として本当に面白そうですよね。やはり元々バラエティ番組がお好きだったんですか? 森 実はそうでもなかったんです。宮崎出身なので、見られる民放チャンネルは二つだけだったこともあり、テレビっ子というほどではありませんでした。大きな転機となったのはTVerが誕生して、見逃し配信を利用するようになったことですね。テレビはレガシーメディアとして「見てない」「面白くない」と否定的な意見も最近は多いと思います。でも、ちゃんと見てみるとやっぱりコンテンツとして楽しめるように作られてて、笑って見れる。「テレビって面白いな」と再認識するきっかけにもなった、2019年のM-1グランプリとそれ以降に見るようになった「あちこちオードリー」などのバラエティが、個人的には大きかったです。 「ゴシップ人狼」という番組企画を思いついたきっかけは何だったか……忘れてしまったんですが(笑)、ただ、幸良Pが所属するテレビ局は、「6番目の在京キー局」にしようとは意識していました。具体的な名前は書いていませんが、「日テレではない」「TBSでもない」と暗示して、既存の局ではないと伝えたかったんです。たとえば「帝国テレビ」など、ありそうで存在しない名前を付けるのも一つの手としてあるとは思いますが、それは避けました。なるべく固有名詞は変えずに使いたいと思っていて、「週刊文春」などもそのまま出しています。