「警察に聞かれたら『ウェブでみた』と答えて」被告の交際相手の男性が”口止め”証言 孤立出産で罪に問われる女性たち#2
交際相手の家のごみ箱に死産した赤ちゃんの遺体を遺棄したとして起訴され被告人となった、20歳のベトナム人技能実習生の裁判。技能実習生はなぜ孤立出産にいたったのだろうか。 【写真で見る】死産した男児の遺骨 26日、交際相手の男性(技能実習生)が法廷に立ち、監理団体などから「『妊娠したら帰国させる』と繰り返し説明され、事件後は「監理団体から言われた、と言わないよう」口止めされた旨を証言した。
法廷に持ち込まれた小さな遺骨
26日、福岡地裁の法廷に、小さな遺骨が置かれた。2024年2月、ベトナム国籍の技能実習生グエン・テイ・グエット被告(20)が交際相手の男性の家で死産した男児のものだ。 弁護人らが、引き取ってきたばかりの遺骨を見せると、グエット被告の目からぽろぽろと涙が溢れた。長い髪を下ろし黒いTシャツ姿で目を赤くして泣く様子に、傍聴席にいた技能実習生の仲間たちも涙を流した。
20歳の実習生が問われた死体遺棄罪
起訴状によると、ベトナム国籍の技能実習生グエン・テイ・グエット被告(20)は2024年2月、福岡市にある交際相手の家で死産した男の赤ちゃんの遺体をビニール袋に入れ、ごみ箱に遺棄したとされている。 検察側は「誰にも知られずに男児の遺体をごみと一緒に処分しようと考え、キッチンばさみでへその緒を切断し、遺体をビニール袋に入れてごみ箱に捨て、さらにごみ箱を覗き込んでも遺体が見えないようにケーキが入っていた空き箱を被せた」と主張。 一方、グエット被告は「まったく違います。遺棄していません、無罪です」と起訴内容を否認、弁護側も無罪を主張している。
「血がいっぱい」「顔が真っ青」交際相手の証言
26日の公判では、交際相手の技能実習生が証言台に立ち、自宅に戻りグエット被告を発見した当時の様子を語った。 被告の交際相手の男性(技能実習生)「ドアを開けると血がいっぱいありました。グエットさんは部屋の中央に横たわって息が弱いように見えました。周りにも血がいっぱいあり、顔色も真っ青でした。何も考えられずに『とにかく病院に』と思いました。血は壁、床、トイレ、浴室、寝室にもついていました。」 そして、弁護人の質問は、妊娠をめぐる技能実習生の認識に及んだ。 弁護人 Q:日本に来る前、ベトナムの送り出し機関から「妊娠したら帰国させる」と言われましたか? ―聞いていました。 弁護人 Q:はっきり覚えているのはどうして? ―監理団体などが(現地に赴いて)何度も繰り返し言っていたから。 弁護人 Q:日本に来てからルールを教えてもらった? ―「異性の住んでいる所へ遊びに行ってはいけない、交際してはいけない」と(言われていました。) 弁護人 Q:勉強会で実習生同士の恋愛に注意を受けた? ―はい。 弁護人 Q:どんな注意でしたか? -私とグエット被告、このまま(交際を)続けていたら経済的に1か月休むという罰を受けるかもと言われました。 弁護人 Q:監理団体から「『妊娠したら帰国させる』などと言われたと誰かに言ってはいけません」と言われましたか? ―はい。「警察か何かから聞かれたら『ウェブで検索して見た』というふうに答えてください」と(言われました。)