「冬のボーナス」民間企業の平均支給額40万円台は高い?低い? 「企業は頑張った」が...喜べない事情も
全企業のボーナス支給総額が大幅増だから、個人消費は拡大する
――40万9399円という額ですが、企業はもっと出せるはずとみるのか、ずいぶん頑張ったなとみるのか。ズバリ聞きますが、喜んでいい数字なのか、それとも少しガッカリな数字でしょうか。 今井大輔さん 喜んでいい数字だと思いますよ。私たちとすれば、3.5%増というのは妥当な額で、企業としては十分奮闘して出す額と見ております。 ――冬のボーナスによって個人消費の拡大は期待できるでしょうか。 今井大輔さん 期待できると考えています。内閣府が11月15日に発表した今年7~9月の国内総生産(GDP)速報値は、実質の季節調整値が前期比0.2%増、年率換算で0.9%増でした。個人消費に強い数字が出て、全体を押し上げています。10?12月も伸びは鈍化するものの、増加基調が続くと考えています。 【図表】を見てください。民間企業の冬のボーナス支給総額は人手不足を背景とする、労働者つなぎ止めを目的としたボーナス支給を実施する企業の増加により、前年比6.4%増と大幅に押し上げられる見込みです。 ボーナスを支給する事業所、支給される労働者の数も大幅に増えますから、個人消費は拡大すると思われます。
そう喜べないのは結局、人手不足が解消しないから
――今冬のボーナスのことで、特に強調しておきたいことがありますか。 今井大輔さん 冬のボーナス支給額が上昇する背景には、今年の春闘の賃上げ率が高かったことと、企業業績が好調だったことの2点があげられますが、私たちは、賃上げ率の高さのほうがより大きな要因と考えています。 人手不足の進行があまりに深刻なため、高い賃金を支払わないと労働者を集められない現実があります。我々は日本経済の本質的な課題は、デフレから人手不足へと変化しつつあると考えています。 たとえば、建設業の人手不足が建設投資の重石になっているほか、すでに観光地でオーバーツーリズムの問題も指摘されているところですが、宿泊業などの人手不足でインバウンド需要を十分に取り込めないなど、供給制約が需要の顕在化を妨げている状況です。 ――つまり、冬のボーナスがいいからと言って、ウハウハ喜んでばかりはいられないということですか。 今井大輔さん そのとおりです。人手不足が供給の天井となっています。それもかなり低い天井です。経済の成長力を高めるためには労働生産性の上昇などを通じて人手不足によるボトルネックを回避することが重要です。 労働生産性の上昇は来年以降の持続的な賃金上昇にもつながります。 (J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)