久保建英は「ベストな状態を取り戻した」がレアル・ソシエダは得点力不足に悩む 番記者が指摘する攻撃の問題点
【ラ・レアルの得点力不足の正体】 こうしたなか、ラ・レアルの"得点力不足"は何カ月も前から誰もが知る悩ましい問題だ。 DFロビン・ル・ノルマン(現アトレティコ・マドリード)とMFミケル・メリーノ(現アーセナル)の退団後、ディフェンスに重点を置いて堅守を手に入れた代償として、イマノルは監督就任以来チームの特徴であった攻撃的なサッカーを"忘却"している。 攻撃はアウトサイドに偏り、チャンスメークの責任はすべてふたりのウイングに委ねられている。久保とバレネチェアはともに優れたドリブラーだが、多くの試合でDFふたりと対峙せざるを得ない。しかし、その守備網を毎回突破することなど不可能だ。ラ・レアルはこうなった場合、インサイドで攻撃をうまく組み立てられていないため、攻め手を失うことが多々ある。 中盤のルカ・スチッチとブライス・メンデスはお互いを理解しているようには見えず、多くの場合、マルティン・スビメンディがボールを運び、攻撃に参加してチャンスを生み出している。 第15節終了時でラ・リーガの総得点数で下にいるのはバジャドリードとヘタフェのみ。この下位に沈む2チームと中位のラ・レアルを比較すべきではないが、これまでどれだけ得点力不足だったのかがわかるだろう。 アレクサンデル・イサク(現ニューカッスル)とアレクサンデル・セルロート(現アトレティコ・マドリード)の退団以降、チームはシーズン15ゴールを保証できるストライカーを欠いている。CFの代役を務めたオヤルサバルは昨季いい数字を残したが、今季は十分なパフォーマンスを発揮できていない。 高額の移籍金で加入したオーリ・オスカルソンはエースストライカーの役目を担うはずだったが、ここまでは得点よりもチャンスメークに秀でており、現在、ふくらはぎの負傷で欠場中。ウマル・サディクは数少ない出場時間を生かせていない。
【CF以外の選手がもっと得点に絡む必要がある】 その点で久保やバレネチェア、メンデス、スチッチが、もっと得点に絡む必要がある。ラ・リーガでは久保がオヤルサバルに並ぶ3ゴールでチーム得点王だが、メンデスとスチッチは1ゴールのみ、バレネチェアはまだゴールがない。シェラルド・ベッカーも1ゴールしか決めていない。メリーノは2列目から走り込んでゴールを奪うことができる選手だっただけに、彼を失ったことは大きな痛手となっている。 チームにおいて重要な役割を担うウイングは正確なクロスを上げることができるが、フィニッシャーにうまく合うことはほとんどない。この状況を解消するためには、アヤックス戦で久保のクロスをバレネチェアがファーポストで合わせたように、攻撃により多くの人数をかけ、ボックス内でゴールを決める必要がある。 それでも、まだ完全に爆発しているわけではないものの、ラ・レアルは11月以降、得点面で成果を出し始めており、もはや4試合連続無得点という事態に陥った開幕当初の面影は消えた。ここ1カ月の公式戦7試合で13ゴールを記録。そのうち5ゴールは5部のホベ・エスパニョールから奪ったものだが、これまで得点力不足に悩んできたチームが多くの得点を挙げたことは評価に値する。 そしてシーズン最高の瞬間を迎えている今、久保とともにラ・リーガでの目標に少しでも近づき、ELと国王杯で次ラウンドに進むために重要な局面に入り始めている。 (髙橋智行●翻訳 translation by Takahashi Tomoyuki)
ウナイ・バルベルデ・リコン●取材・文 text by Unai Valverde Ricón