<春再び・センバツ2021東海大相模>/中 投手陣を引っ張るエース 大舞台経験、強い自覚 /神奈川
◇走り込み、ブルペン自ら率先 打球は長打を警戒し深く守っていた右翼手・伊藤航大(こうだい)選手(1年)の前に落ちた。2020年10月の秋季関東地区大会。東海大相模は東海大甲府(山梨)を相手に、1―0で九回裏を迎えた。1死一、二塁。人工芝で高く跳ねたボールが外野を転々とする間に、逆転のランナーが生還。目前だったベスト4入りを逃すサヨナラ負けになった。 マウンドに立っていたのはエース・石田隼都投手(2年)。この試合、八回まで相手打線を3安打無失点の好投を見せていた。投げたボールはチェンジアップ。失投ではなかったが、「最後の詰めの甘さを感じた」。その経験は、1年から甲子園のマウンドを知る左腕を「一球一球を大切に投げる」という原点に立ち返らせた。 大会後はフォームの改善に取り組んだ。ボールに力を込められるように、下半身を使った体重移動を研究。「対策されても勝てるピッチャーになりたい」。狙われても打たれない「直球のキレ」を意識する。 エースの自覚は強い。21年の新年を迎えたばかりの練習では、走り込みで一度も先頭を譲らなかった。門馬敬治監督は「石田が一番ブルペンで投げるから、他の選手もついていく。いい効果だ」と目を見張る。 チームで唯一、1年から甲子園を経験している。20年8月のセンバツ交流試合では試合には敗れたが、強豪の大阪桐蔭を相手に7回2失点の好投を見せた。「次は勝つ。甲子園の風景をイメージしながら練習している」という。 石田投手を軸とする投手陣は、秋季県大会決勝で好投を見せた大森幹大投手(同)らが控える。公式戦での実戦経験がまだない1年の投手も含め、門馬監督は「ピッチャーは本当に良くなってきている」と話す。中でも金城龍輝投手(同)は、昨年夏の悔しい思いを胸に雪辱を期している。 20年8月の独自大会決勝。逆転勝ちで優勝を決め喜ぶチームメートをよそに、グラウンドで涙を流した。この試合、2番手で救援したが、3失点。「自分のマウンドで点差をつけられた。それでも先輩たちが逆転してくれて助けられた」。そう思うと、自然と涙があふれたという。 気持ちを前面に出すピッチングが持ち味だ。しかし、秋季県大会では3試合の登板機会を得たが、関東大会はベンチからマウンドを見つめた。「投げられなかった悔しさと、任せ切りになってしまった申し訳なさがあった」。コントロールが定まらず、投げても打たれてしまった当時を「苦しかった」と振り返る。 この冬、誰にも負けないくらい練習量をこなしている自負がある。「投げ込まないと間に合わない。あと少し、もがきたい」と甲子園のマウンドを目指している。