人工知能の「第3の波」、AIが変革するマーケティングの世界
現代の消費者は、これまでにないほどターゲット化され、個別化されたマーケティングの対象となっている。セールスフォースとハブスポットの2社は、人工知能(AI)が自律的に行動し、複数のステップを踏んで目標を達成する「AIエージェント」をマーケティングに活用している。 「AIエージェントは新たなアプリだ」と、ハブスポット共同創業者兼CTOのダーメシュ・シャーは、先日ボストンで開催された同社の『INBOUNDカンファレンス』で述べていた。一方、セールスフォースのシニアバイスプレジデントを務めるアダム・エヴァンスも、同社が開催したDreamforceカンファレンスの前に行われた筆者との取材で、「AIの第3の波であるAIエージェントの普及が始まった」と語っていた。 つまり、世界最大級の顧客エンゲージメントプラットフォームであるこの2社が、「業界の未来をAIエージェントが支える」という見方で一致したことになる。セールスフォースのエヴァンスが言うように、私たちは現在、ビジネスにおけるAIの第3波に突入しているが、最初の波は予測AIで、その次に来たのが生成AIだった。そして今、新たにやって来たのが、自らの判断で行動するAIエージェントだ。 ハブスポットとセールスフォースの両社は、AIエージェントが、特にマーケティング分野で多くの仕事を引き受けることになると考えている。 ハブスポットが展開する新たなエージェントのBreeze(ブリーズ)は、ポッドキャストを編集し、ブログやSNSの投稿を作成し、パーソナライズされたメールを生成し、人々や企業をリサーチする。さらに、マーケティングキャンペーンを作成し、ウェブサイトやアプリで顧客の質問に回答し、顧客データを統合する。 一方、セールスフォースによるAI、Einstein(アインシュタイン)のプラットフォーム上で構築されたエージェントも、質問に答え、予約をスケジュールし、製品を販売し、次の行動を提案する。 これらのツールは、これまでの定型文の返事しか返せなかった企業サイトのチャットボットを劇的に進化させることになる。そして、Eコマースの顧客の購入履歴を分析し、パーソナライズされたメッセージやメールで顧客にアプローチすることを可能にする。 セールスフォースは、よりエンタープライズ向けのAIエージェントを目指しており、ハブスポットは、中規模市場向けで、ユーザーフレンドリーかつ手頃な価格を目指すと述べている。 ■スパムが増加する懸念 しかし、ここで2つの重要な疑問が浮上する。その1つ目は、消費者が、あらゆるデータを駆使するデジタルロボットによって支配されつつある情報エコシステムにどう対処していくかという問題だ。1つの可能性は、スパムが今まで以上に増加することだ。なぜなら、この種のマーケティングを大規模に行うことが、より簡単かつ安価になるからだ。