《ブラジル》寄稿=日本にとっての日系人の重要性=改めて問う、その多様性と価値=梅田邦夫=元ブラジル大使=海外日系人協会理事
日系人の日本への貢献
各国の日系人は様々な形で「日本の国益」に貢献してくれている。我々は、この点をよく認識し、日系社会との連携・交流を大切にしなければならないと思う。彼らの貢献を例示したい。 (イ)各国日系社会が持つ「強い信頼」 各国の日系社会は「強い信頼」を勝ち得ており、「親日感」と「日本への信頼感」を生んでいる。彼らは日本と移住先国との間の大きな「財産」である。 24年5月ルーラ・ブラジル大統領は岸田総理到着前の日本人記者団とのインタビューで、「ブラジルは世界で最も多くの日本人移民を受け入れており、懸命に働き続けた日系人に対して多くの感謝の念を抱いている。ブラジルが今日のような国になるために、日系人がどれほど貢献したか私たちは知っている」と語った。 中南米や北米だけでなく、南太平洋諸国などにおいても日系人は、政治・行政、農業、法曹、医学、教育、ホテル・料理店経営などあらゆる分野で活躍している。 24年9月に逝去されたフジモリ元ペルー大統領が、ペルーの安全回復、人種差別克服に果たした役割はとても大きい。 (ロ)日本文化普及の担い手 例えば、ブラジル全土には、436の日系団体、380校の日本語学校がある。これらの団体は、日本食、アニメや漫画、日本語や柔道など日本文化の普及に尽力している。他の中南米諸国、北米においても同様である。 (ハ)日本が困難に直面した時の支援 終戦直後、深刻な物資不足に苦しむ日本に対し、米国の「アジア救済公認団体」(略称LALA)から食料、衣料、医薬品など大量の救援物資(当時の400億円相当)が届けられた。内20%は南北アメリカに居住する日系団体からの寄贈。粉ミルクは学校給食の開始に寄与。 力強い日本応援団(東日本大震災、熊本地震等の被災者に対し義援金、処理水問題、歴史問題など)。 (ニ)日本が人口減少に苦しむ中、日本の活性化への貢献 日本には、世界で3番目に大きな日系社会が存在し、過去30年間日本の製造業への貢献は非常に大きい。同時に、個人としてもスポーツ選手・評論家(セルジオ越後など)、宗教家(東本願寺―大谷門首)、大学教授(アンジェロイシ武蔵大学教授等)、経営者(斎藤俊夫など)、弁護士(照屋エイジ等)、行政書士(井手口睦美)、エンジニア(オオルイ・ジョアン)、落語家(らむ音)、美容師等、様々な分野で貢献する人材を輩出している。
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