《ブラジル》寄稿=日本にとっての日系人の重要性=改めて問う、その多様性と価値=梅田邦夫=元ブラジル大使=海外日系人協会理事
注目すべき南太平洋や東南アジア、欧州の日系人
横浜の「JICA移住資料館」の展示、「海外日系人協会」の関連資料では、北米・中南米以外の日系人については触れられていない。是非、南太平洋や東南アジア、ヨーロッパの日系人にも関心を払っていただき、展示内容にも改善をお願いしたい。 現役時代に赴任などしたこともあり、北米・中南米に加え、戦前日本人が出稼ぎに行っていたフィリピン、日本軍が駐留していたインドネシア及びベトナムなどには日系人がおられることは承知していたものの、南太平洋のミクロネシア、パラオ、マーシャルの3カ国では、人口の約20%近くが日系人とは知らなかった。 23年5月、外務省の依頼を受けて、福島原発「処理水」の根回しで、パラオとマーシャルに訪問した際、パラオの首相は、日本を信頼しており、日本を支持すると述べ、同席した外務大臣は日系人の方であった。また、マーシャルでは11人の閣僚中、7名が日系人であると知り、とても驚いた。 戦前、これら3カ国は、日本が国際連盟の信託統治を受けていた地域であるが、この3カ国でこれまでに7名の日系人大統領が誕生している。なお、これらの国では日本大使館と日系社会との関係は緊密である。 豪州や欧州においては、婚姻を通じて各国に住み、子供を育てている方が多いと思われる。これらの方の存在は、日本にとって重要な「外交資産」として意識されていない可能性があるが、例えば、パリ五輪BMXレーシング・金メダリスト・榊原サヤ(豪州)、スケートボード女子パーク決勝で金メダルと獲得したアリサ・トルー(オーストラリア)、銅メダルを獲得したスカイ・ブラウン(英国)の母は日本人であった。 因みに、ブラジルのパリ五輪代表チームには、スケードボード・銅メダリスト・アウグスト・アキオ(日系3世)の他、数名の日系人選手がいた。WBC世界大会で日本チームの一員として活躍したラーズ・ヌートバー選手(米)の母親も日本人であった。
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