仏大統領選はマクロン×ルペンで決選投票 ひとまず胸なで下ろすEU・ドイツ
苦戦強いられる「自国第一主義」
EUとの関係を強固なものにし、フランスへの投資をより増やし、公務員や議員の定数削減で歳出減を目指すというマクロン候補の公約は、現状に不満を抱えるフランス人有権者を大きく動かした(フランスにおける公務員の割合は5人に1人で、先進国では群を抜いて高い割合となっている)。しかし、マクロン候補が掲げる政策は理想ばかりで、現実的ではないとの指摘が少なくないのも事実だ。 マクロン、ルペン両候補とも、フランスにおける雇用問題の改善を重視しているが、マクロン候補は「EUとの関係強化。移民や難民の受け入れに賛成」、ルペン候補は「反EU。フランス第一主義」というスタンスだ。反EUや自国第一主義、移民の受け入れに反対というスタンスは、オーストリアやオランダで行われた選挙でも右派政党が掲げてきたものだが、興味深いことに昨年の米大統領選挙で「アメリカ第一主義」を唱えたトランプ候補が勝利して以降、ヨーロッパで同様の政策を掲げた政党や候補者は軒並み苦戦を強いられている。 このような風潮を意識してか、反EU・反移民を掲げる政党としてドイツで注目を集めてきた右派政党「ドイツのための選択肢」にも変化が生じ始めた。ギリシャ経済危機の対応への不満から2013年に設立された同党は、当初は「反EU」のみを唱える政党であったが、支持者が増えるにつれて内部闘争が何度か発生し、党は反移民・反イスラムを掲げるようになった。しかし、党の顔でもあるフラウケ・ペトリー党首は19日、9月に行われる連邦議会選挙には立候補しないと発表した。党内の分裂状態が明らかになった格好だ。 党首の辞任は否定したものの、22日に行われた党大会で、連邦議会選挙後に他の野党と協力体制を構築するために反移民や反イスラムと距離を置くべきと主張したペトリー党首の提案は、党内の他のメンバーらによって却下されている。「ドイツのための選択肢」は昨年から支持率ダウンが続いているが、フランス大統領選挙の結果次第では、さらに支持者離れが進む可能性もある。
--------------------------------- ■仲野博文(なかの・ひろふみ) ジャーナリスト。1975年生まれ。アメリカの大学院でジャーナリズムを学んでいた2001年に同時多発テロを経験し、卒業後そのまま現地で報道の仕事に就く。10年近い海外滞在経験を活かして、欧米を中心とする海外ニュースの取材や解説を行う。ウェブサイト