F1分析|フェルスタッペンがレッドブルを離れたら……獲得競争に勝つのはメルセデスじゃなくてアストンマーティン?
ほんの数週間前までは、マックス・フェルスタッペンがグラウンドエフェクト・カー時代を支配するレッドブルから去る可能性があるとは考えられなかった。 【F1ハイライト】F1 2024第2戦サウジアラビアGP決勝 しかしチーム代表であるクリスチャン・ホーナーの不適切行為の疑いに端を発し、陣営内の緊張関係が露呈した。 その詳細は明らかになっていないものの、全体像としては単純だ。フェルスタッペンはホーナーがチーム代表として指揮を執り続けるのであればチームに留まることに消極的であり、レッドブルのアドバイザーであり親しい支持者であるヘルムート・マルコがチームを去るのであれば、彼もチームを去ることを考えるだろうということだ。 フェルスタッペンが2028年までの契約にサインしたのは、2022年3月のことだった。2021年最終戦アブダビGPで物議を醸しながらも獲得した自身初のF1タイトルを受けて、両者はそのコミットメントを延長する時期が来たと判断し、5年間の延長契約を結んだ。 この契約は、2026年のレギュレーション変更から3シーズンを含むものであり、チームとフェルスタッペン双方にとって前例のない長期的な契約だった。スーパースターがマシンに乗っていることを前提に、レッドブルの交渉力は増した。 レッドブルは2026年から独自にパワーユニット(PU)を作る予定だったが、当初はポルシェがそのPUにバッジを付ける予定だったことや、それが頓挫したあとにフォードがパートナーに名乗りを上げたのにも、その影響があったはずだ。 しかし契約から2年が経ち、すでに4連覇も確実視されているフェルスタッペンが、契約を満了する可能性は低いかもしれない。 ホーナー代表自身のコメントが、それを物語っている。バーレーンGPの決勝日、彼はフェルスタッペンがどこにも行くことはないと断言していた。 「彼は契約を満了すると確信している。彼の周りには素晴らしいチームがある。彼はそのチームに大きな信頼を寄せている。我々は一緒に非常に多くのことを成し遂げてきた。彼は2028年までの契約を約束している」 しかし、それからわずか1週間後のサウジアラビアGPで、ホーナー代表はフェルスタッペンがチームを去る理由はないとしながらも、絶対にないとは言い切れないとトーンダウンしているのだ。 「チームとしては、誰かがこのチームから離れたいと思う理由は見当たらない」 「人生におけるどんなことでもそうだが、紙切れ一枚のために誰かをどこかに強制することはできない。もし誰かがこのチームにいたくなかったとしたら、彼らの意思に反して、ここにいることを強制するつもりはない。それは、マシンオペレーターであろうと、デザイナーであろうと、サポート部門の誰かであろうと同じだ」 2026年のレギュレーション変更後、誰が最高のエンジンを手にするのかは誰にも分からない。だが新規参入となるレッドブル/フォードやアウディにとっては、既存サプライヤーよりもはるかに厳しい挑戦とあることは明らかだ。 言い換えれば大幅なリセットが行なわれることになり、レッドブルが現在のような力を保つとは到底思えない。 加えて、F1の歴史が証明しているように最高のドライバーは育ったチームを巣立ち、新たなチームでその実力を証明しようとするものだ。 ミハエル・シューマッハーとベネトン、フェルナンド・アロンソとルノー、ルイス・ハミルトンとマクラーレン、そしてセバスチャン・ベッテルとレッドブルがそうだった。 ありきたりの言葉に聞こえるかもしれないが、全員が新たな挑戦と、新鮮な環境で様々な人々と仕事をし、別の場所でも成功できることを証明するチャンスを求めていた。 トロロッソでの在籍期間を含めると、フェルスタッペンは現在レッドブル陣営で10シーズン目を迎えている。 2024年のフェルスタッペンは、デビュー当時のティーンエイジャーとは全く異なる人間に成長している。長期契約を結んでからの2年間でさえ、フェルスタッペンはさらに成熟し、F1を引っ張る人間としてF1のスケジュールやショービズ的な要素についても臆することなく本音を語っている。 彼はまた、あと10年もF1にとどまるつもりはなく、他にやりたいことがあると強調している。 そのため、レッドブルの内乱や2026年のPUに対する疑念がなかったとしても、契約を本当に満了したいのか、モチベーションを復活させるために別のチームに行きたいのかどうかを考えているはずだ。