【40代・50代「更年期治療」をアップデート!】更年期の治療、よりよく受けるためのポイントは「患者力」。医師とのコミュニケーション、どうしたらいい?
治療の進め方、一人一人異なるのが当たり前です
「私の診察では、初診で汗やホットフラッシュに悩んでいれば、たいていはHRTをおすすめします。発汗やホットフラッシュが、HRTを始める基準のひとつになるんです。また、どんな症状かに限らず、本人が希望しているということも大きな基準になります。 身体症状がなく、倦怠感など精神症状だけの人には、HRTはいきなりすすめません。それでも本人がHRTを望んでいるなら、100%やります。中には、HRTをやりたいと言っているけれど明らかにうつ症状で、心療内科が先だと思われる人もいるので、その場合は心療内科や精神科の受診を提案します」 HRTをスタートするには、必要な検査があるそうだが。 「初診では必ず検査を行うようにしていますが、『今日は検査をしたくない』という方には、『次回は必ず検査を』と約束して、まずはお試しで、1カ月か2カ月分のHRTのお薬を出すこともあります。クリニックによるかもしれませんけど、私の場合はそうですね。 ただ、HRTは最強みたいに思われますが、10人に2、3人は全然効かない人もいるんですよ。『試したけど、出血して嫌だったからやりたくない』という人もいるんです。そういう人は一度試してだめだったことを体験できているので、逆に別の治療にスムーズに進めるのがメリット。速効性がないとしても、サプリメントや漢方薬に前向きに取り組んでもらえます。 また、全身症状はなく、性交痛などフェムゾーン系の困り事だけの場合は、HRTじゃなく腟坐薬やフェムケアなど、局所に絞った治療をします。イライラや不安感があるという人には、安定剤(精神安定剤=抗不安薬)を出すことも。 更年期の不調を感じ、勇気を出して受診したのに、お話と検査だけでは満足しないというか『せっかく来たのに』という思いをさせてしまうでしょう? 希望があればせめて何かを出して、様子を見るようにはする」 『何か』は、例えば前述の安定剤、睡眠導入剤、漢方薬、エクオールのサプリなど、何かしらだそう。 「もちろん、検査結果を見てから考えたいという方もいるので、その場合は処方しません。 HRTのお試しもですが、処方すると安心して帰れます。それで調子がよくなったり、症状が改善したりすることもあるんですから。検査結果を待って『1カ月後にまた来てください』よりは、いいに決まっていますよね。 クリニックや医師にもよると思いますが、私の場合はこんなふうにして治療を進めていきます」
【教えてくれたのは】 吉形玲美さん 産婦人科医、医学博士。浜松町ハマサイトクリニック特別顧問。大学病院で医療の最前線に立ち、女性医療・更年期医療のさまざまな臨床研究にも数多く携わる。女性予防医療を広めたいという思いから、現クリニックへ。更年期、妊活、月経不順など女性の体のホルモンマネジメントが得意。著書に『40代から始めよう! 閉経マネジメント』(講談社) イラスト/Shutterstock 取材・原文・画像制作/蓮見則子