嘉門達夫さんの「ぼったくりイヤイヤ音頭」が効果絶大、客引きの数が半減
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「生ビールを注文したら、やってきたのは発泡酒」 ── こうした歌詞で、飲食店の客引き行為や、法外な値段を要求するぼったくりの店に引っかからないよう訴える「ぼったくりイヤイヤ音頭」が絶大な効果をみせています。昨年暮れから東京・新宿東口商店街で流しだし、今年からは新たに墨田区の錦糸町駅前でも使われはじめ、客引きの数が半減したとも。この効果に複数の自治体が興味を示しているようです。
あの音楽を聴くと客引きがイヤになる
「ぼったくりイヤイヤ音頭」は、嘉門達夫さんの作詞・作曲で、2015年10月に新宿区、新宿警察署、東京青年会議所新宿区委員会などの共催で行われた客引き防止キャンペーン「新宿イメージアッププロジェクト2015」の一環で作られました。 東京青年会議所新宿区委員会の嶋崎知実委員長によると、企画検討の際、音声アナウンスによる啓発よりも、音楽の方が耳に残りやすい、という話になり、声にインパクトがあって年配者にも広くアピールできるなどの点から、「替え唄メドレー」でおなじみのシンガーソングライター・嘉門達夫さんに制作を依頼。その際、皿に残ったエビフライを次の客に出す、などといった客引き行為にまつわるエピソードも提供しました。 嘉門さんから曲が上がってきたのは、2015年8月ごろ。嶋崎さんは、「聴いた時、面白いなと思いましたし、区や警察署も、“聞きやすい”などと好反応でした」と振り返ります。 新宿東口商店街では昨年暮れより、連日16時20分ごろから夜の23時ごろにかけてこの曲を流しています。嶋崎さんが聞いたところによると、客引きからは「あの音楽を聴くとイヤになる」と嘆く声も出ているそうです。
パトロールとの相乗効果で客引きの数は半減
「インパクトがあるし、歌の文句もおもしろい」とこの曲を評価するのは、新宿東口商店街振興組合の片平一郎事務局長。この曲の街頭放送に加え、パトロールなどの客引き防止策により、取り組み前に比べて客引きの数は半減し、客引きに声をかけられても相手にしない人が増えたと説明します。 商店街では、組合員の店の前にきた予約客を、客引きが「店は満員」などとウソをついて奪ってしまうケースもあるそうです。片平さんは「お客様には、この街にきて嫌な思いをしてほしくない」と話していました。 新宿区での取り組みを知った墨田区の坂井ユカコ議員らの勧めもあって、墨田区では10月21日から錦糸町駅の南口でこの曲を流しはじめました。区の担当者は、「駅前をひそかに視察すると、“やりづらい”とこぼす客引きの声が聞こえてきまして、確かに効果的だと実感しました」と強調します。 区では、客引き防止に効果があるとみて、当初午後7時30分~同8時30分の1時間だった街頭放送の時間を、11月からは同6時~7時、同7時30分~同8時30分、同9時~10時の計3時間に増やしました。
他の自治体からの問い合わせも
こうした声に対し、嘉門さんは、「新宿東口に行くたびに自分の歌声が流れていて面映ゆいですが、無機質なアナウンスよりも楽しい上、効果がある! と聞き、作って良かったと思っています。口コミで墨田区からも依頼があり、転用を快諾しました。さらにオファーがあればご相談に乗りますよ」とコメントしています。 所属事務所の「さくら咲く」によると、他の自治体からの問い合わせも複数あるそうです。客引きが煙たがるこの「ぼったくりイヤイヤ音頭」、今後も採用する自治体は増えるでしょうか。 (取材・文:具志堅浩二)