大谷翔平選手、ワールドシリーズで亜脱臼した肩を手術 来シーズンはどうなる?
左肩をかばった走塁、スイングにも影響
しかし、左肩をかばった走塁を見ても、大谷選手がこの3試合、いつもと同じスイングをできていたとは思えません。今回の左肩の亜脱臼が初めての受傷だったとして、その2日後に傷んだ組織が完全に治るということはないからです。損傷した組織からの出血が関節内にはまだ残り、炎症も起きていたでしょう。そして懸念されるのが、今後のプレーに影響が出ないかどうかです。
損傷した部位が治癒しにくく、再発することも
この関節がずれて脱臼した時、損傷した関節唇が元通りに治癒しにくいのが、このけがの特徴です。周囲の筋肉はトレーニングで強化できても、関節唇を鍛えて強くすることはできません。そのため、脱臼が再度生じることがあり、脱臼を繰り返す場合は、手術以外に完全に治す方法はありません。大谷選手は早々に手術に踏み切りました。 手術では、剝離(はくり)した関節唇を骨に縫い付けて修復する方法が広く行われています。筋肉のついた肩甲骨の一部をカットし、受け皿に金属スクリューで固定する方法もあります。近年は、傷口を小さくできる関節鏡で行う手術が発展しています。通常、スポーツ復帰には術後4~6か月とされています。
もし右肩だったらかつての投球維持は至難の業
今回のけがで、ひとつ幸いだったことは、投球する右肩ではなかったということです。投球側の脱臼だった場合、投手としてメジャーリーグでパフォーマンスを出すことは、たとえ手術をしても至難の業でしょう。文献を調べてみましたが、メジャーリーグの投手で、投球側の肩の脱臼の手術をした後のまとまった臨床成績の報告はありませんでした。
バッティングへの影響は限定的、ヘッドスライディングは危険
一方、バッティングへの影響は限られているため、バッターとしてのパフォーマンスはそこまで心配する必要はないでしょう。気を付けなくてはならないプレーは、走塁でのヘッドスライディングや、守備でのダイビングキャッチです。これらのプレーは脱臼するリスクの高いプレーです。 来年、東京ドームで行われるドジャースの開幕戦で、また輝くようなプレーを多くの人が待ち望んでいます。今回の肩のけがが大谷選手のプレーに影響しないことを祈ります。
大関 信武(おおぜき のぶたけ)
整形外科専門医・博士(医学)、読売巨人軍チームドクター、日本スポーツ医学検定機構代表理事、日本スポーツ協会公認スポーツドクター 1976年大阪府生まれ、2002年滋賀医科大学卒業、14年横浜市立大学大学院修了。15年より東京医科歯科大学勤務。野球、空手、ラグビーを経験。スポーツ指導者などへのスポーツ医学知識の普及を目指して「スポーツ医学検定」(春、秋)を運営している。東京2020オリンピック・パラリンピックでは選手村総合診療所整形外科ドクター。